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高齢者の歩行が不安なとき|転ぶ怖さの分析をして本人・家族ができる対策を立てましょう

  • GLOBIZ WELLNESS
  • 1 日前
  • 読了時間: 12分




ご自身が不安を感じて、歩くことについて調べている方もいると思います。


ご家族が、壁や家具につかまって歩く姿や、以前より外出を避けるようになった変化に気づいて少し不安になっているかもしれません。


歩くことに不安を持つと、


「できるだけ歩かないほうがよいのか」 「杖を使うべきなのか」 「病院へ相談したほうがよいのか」


と、色々と考えてしまいますよね。


歩行への不安は、筋力やバランス能力、痛みなどによって実際に歩きにくくなったことから生じる場合があります。一方で、「転ぶかもしれない」という怖さが強くなり、必要な移動や外出まで避けるようになる場合もあります。



どちらか一方が関係していることもあれば、身体の変化と不安な気持ちが重なっていることもあります。


大切なのは、「年齢のせい」「気持ちの問題」と決めつけず、いつ、どこで、どのようなときに不安を感じるのかを確かめることです。


この記事では、高齢者が歩行に不安を感じる理由、転ぶことへの怖さが生活に与える影響、本人や家族ができる対策、杖や歩行器などを検討する際の考え方を解説します。


【注意】

大切な注意点 急に片方の手足へ力が入らなくなった、ろれつが回らない、言葉が出ない、突然立てない・歩けない、物が二重に見える、経験したことのない激しい頭痛がするといった症状は、脳卒中の可能性があります。杖を購入したり自宅で運動したりして様子を見ず、119番通報を含む速やかな医療対応を優先してください。


高齢者の歩行不安は「身体の変化」と「転ぶ怖さ」を分けて考える

高齢女性が手すりのある道を慎重に歩いている様子

歩行への不安があるときは、


  • 実際に歩行が不安定になっているのか

  • 転倒への怖さが強くなっているのか


を分けて確認します。どちらか一方が関係する場合もあれば、両方が影響し合っている場合もあるためです。



歩行が不安定になる要因は一つではない

高齢者の歩行が不安定になる原因は一つではありません。


筋力やバランス能力の低下だけでなく、膝・股関節・腰などの痛み、めまいや立ちくらみ、視力や聴力の変化、足や靴の問題、薬の影響、段差や照明などの住環境が関係している可能性があります。


高齢者の転倒予防に関する国際ガイドラインでも、歩行やバランスだけでなく、薬、起立性低血圧、視聴覚、足部と履物、住環境、転倒への不安などを含めた多面的な評価が推奨されています。



こんな変化が見られたら歩行状態を見直す

次のような変化が見られた場合は、歩行状態を見直す一つのきっかけになります。


  • 何もない場所でつまずく

  • 歩幅が以前より小さくなった

  • すり足や前かがみの歩き方になった

  • 立ち上がりや方向転換でよろける

  • 壁や家具につかまることが増えた

  • 横断歩道を渡り切るのが不安になった

  • 段差、坂道、暗い場所を避けるようになった

  • 外出や買い物へ行く回数が減った


国立長寿医療研究センターの転倒防止セルフチェックでも、転倒経験、つまずき、歩行速度の低下、めまい、膝痛、視聴覚の変化、転倒への不安、服薬、室内の暗さや段差などが確認項目として扱われています。


足が上がりにくい、すり足が目立つ、片脚だけ動かしにくいといった症状がある場合は、原因となる病気や身体機能の変化を確認する必要があります。


歩く速さが以前より明らかに遅くなった場合は、歩行速度の変化に焦点を当て、体力や筋力、生活状況を確認します。



「転倒恐怖感」と「転倒後症候群」は同じとは限らない

「転ぶかもしれない」という不安や懸念は、研究や転倒予防のガイドラインでは、転倒恐怖感、あるいは「転倒への懸念」として扱われています。


転倒を経験した人だけに起こるものではありません。国内の地域在住高齢者を対象とした前向き研究でも、転倒恐怖感は転倒経験のある人だけでなく、転倒経験のない人にも見られることが示されています


一方、「転倒後症候群」は、転倒後に歩行や移動能力が低下し、活動を制限する状態を表す言葉として使われることがあります。


ただし、その定義や評価基準は文献によって異なります。転倒後症候群について扱った総説でも、確立した基準がないため、一般的な有病率を測定するのは難しいと説明されています。


本人や家族が転倒後症候群かどうかを自己判断するのではなく、より広い「転倒への不安」として、身体状態と活動への影響を確認することが大切です。



「転ぶのが怖い」から歩かなくなる悪循環に注意する

転倒への不安が活動量の低下や歩きにくさにつながる悪循環を示した図

転倒への不安から危険な場所を避けることは、安全上必要な場合があります。一方で、生活に必要な移動や外出まで控えるようになると、活動量が減り、さらに歩きにくくなる可能性があります。


実際に歩行が不安定な人が、急な坂道や暗い階段を避けることは、不自然な行動ではありません。そのため、「怖がらずに歩きましょう」と励ますだけでは適切ではありません。


問題となるのは、実際の危険性にかかわらず、必要な移動や外出まで避けるようになった場合です。


転倒への不安から外出や活動を控えると、次のような流れが生じる可能性があります。


転ぶことが怖い → 外出や歩行を控える → 身体活動や人との交流が減る → 筋力やバランス能力が低下する → 以前より歩きにくくなる → さらに転倒が怖くなる


ただし、転倒への不安と活動制限、身体機能低下の関係は、単純な一方向ではありません。


75歳以上の地域在住高齢者を追跡した研究では、身体的フレイル、追跡期間中の転倒、機能的移動能力の低さが、その後の「転倒への懸念による活動制限」を予測していました。


つまり、活動を控えたから身体機能が低下したと決めつけるのではなく、もともとの身体状態や実際の転倒も同時に確認する必要があります。


国内の地域在住高齢者を対象とした研究でも、転倒恐怖感は、立ち続ける、身体を曲げ伸ばしする、歩くといった複数の日常生活動作の困難と関連していました。


ただし、これは横断研究による関連であり、どちらが原因かを示したものではありません。


重要なのは、不安を無視することでも、すべての活動を止めることでもなく、安全を確保しながら、本人に必要な活動を残すことです。



不安を感じる場面から最初の対策を決める


同じ「歩くのが不安」という訴えでも、痛みがある場合、立ち上がるとふらつく場合、暗い場所だけが怖い場合では、最初に確認することが異なります。どの場面で何が起きているのかを整理すると、必要な対応を考えやすくなります。


状態や不安を感じる場面

確認したいこと

最初に検討する対応

急に歩けなくなった、片側に力が入らない

発症時刻、言語・視覚・意識の変化

救急要請を含む医療対応

膝や股関節、腰、足に痛みがある

痛む場所、いつからか、腫れやしびれ

かかりつけ医や医療機関への相談

立ち上がるとふらつく

血圧、脱水、体調、薬の変更

医師・薬剤師への相談

暗い廊下、段差、浴室だけが怖い

照明、手すり、床、履物、動線

住環境と動作方法の見直し

人混み、屋外、長い距離が不安

疲労、歩行速度、バランス、休憩場所

歩行評価、経路・休憩方法の調整

転倒後から外出しなくなった

ケガの有無、怖い場面、活動制限

身体評価と段階的な活動再開

家具や家族の腕を強くつかむ

支えなしで歩ける距離、つかまる場所

歩行評価と補助具の検討


住環境については、床に置かれた物、暗い通路、段差や敷物などが歩行時の危険につながることがあります。


暗い動線やコード、めくれたマットなど家庭内の転倒リスクを示した図

本人の注意力だけに頼るのではなく、つまずきやすい物を移動する、足元を明るくする、動線を確保するといった対策も検討します。


国立長寿医療研究センターも、段差、滑りやすい床、敷物、履物、家具、電気コード、暗い照明などを転倒の外的要因として挙げています。


また、薬の変更後から眠気やふらつきが増えた場合でも、自己判断で服用を中止してはいけません。服用している薬をまとめて、処方した医師や薬剤師へ相談します。



歩行への不安に対してできる4つのこと


歩行への不安には、身体状態の確認、環境の調整、活動の続け方、補助具の検討という複数の方向から対応します。どれか一つだけで解決しようとせず、不安の背景に合わせて組み合わせることが大切です。



身体状態と歩き方を確認する

歩行への不安が続いている場合は、「年齢のせい」と決めず、かかりつけ医や理学療法士などへ相談します。


医療機関のほか、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターでも、高齢者の生活や介護に関する相談ができます。どこに相談してよいか分からない場合に、地域の相談窓口として利用できます。


相談時には、単に「歩くのが不安」と伝えるだけでなく、次の内容を整理しておくと、原因や必要な対策を検討しやすくなります。


  • いつごろから変化したか

  • 転倒やつまずきがあったか

  • どの場所や動作で不安を感じるか

  • 痛み、しびれ、めまい、息切れがあるか

  • 最近、薬や靴を変えたか

  • どの程度の距離なら歩けるか

  • 壁、家具、家族の支えが必要か


歩行、立ち上がり、バランス、筋力、痛み、病気、薬、生活環境などを組み合わせて、必要な対策を考えます。



不安を感じる環境と靴を見直す

「家の中は歩けるが外が怖い」「昼間は平気だが夜のトイレが不安」という場合は、場所によって歩行条件が異なっています。


室内では、次のような点を確認します。


  • 廊下やベッドからトイレまでの動線が暗くないか

  • 床にコードや荷物が置かれていないか

  • 小さなマットや敷物がめくれていないか

  • 浴室や玄関に必要な手すりがあるか

  • 靴下や滑りやすいスリッパで歩いていないか

  • 靴のサイズ

  • かかとの固定

  • 靴底の摩耗

  • 道路の傾斜や凹凸

  • 休憩できる場所


ただし、環境を整えても強いふらつきが残る場合は、環境だけで解決しようとせず、身体状態や補助具を見直してください。



安全を確保しながら身体活動を続ける

歩行に不安があるからといって、すべての人が同じ運動をすればよいわけではありません。


厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者に対し、有酸素性運動、筋力トレーニング、バランス運動などを組み合わせた多要素な運動が推奨されています。


特に、転倒への不安が強く、ほとんど外出しなくなっている人へ、いきなり一人での散歩や難しいバランス運動を勧めるのは適切ではありません。


最初は、本人の状態に応じて、安全性と達成しやすさを調整します。


  • 椅子や手すりを利用できる場所で行う

  • 家族や専門職の見守りがある状態から始める

  • 長い距離ではなく、必要な生活動作から練習する

  • 本人が再開したい活動を目標にする

  • 痛みや強い疲労が出る前に休む


国際ガイドラインでは、地域で生活する高齢者の転倒への懸念に対し、運動だけでなく、認知行動療法や作業療法を多職種による支援の一部として検討することも推奨されています


身体機能に比べて活動制限が大きい場合は、心理面を含めた支援も選択肢になります。



歩行補助具を検討する



杖や歩行器は、歩くことを諦めるための道具ではありません。本人に必要な支えを補い、安全に移動できる範囲を保つために使います。


どの種類が合うかは、必要な支えの強さ、使用場所、片手と両手のどちらで操作するかなどによって変わります。杖が必要か判断する目安や種類の選び方は、別の記事で詳しく解説しています。


両手で身体を支えたほうが安定する場合は、歩行器も候補になります。歩行器には固定型、交互型、車輪付きなどがあり、本人の身体状態や屋内外の使用環境によって適する種類が異なります。


杖や歩行器とは仕組みの異なる選択肢もあります。


当社が扱う「WIM S」は、身体に装着して歩行動作をアシストする機器です。床に接地して身体を支える杖や歩行器とは全く違うアプローチ歩く動作をサポートします。


転倒しそうになった身体を保持する用途の代用品としてではなく、自分の足を動かす、自分の足で歩くための歩行を支援するロボットです。


「杖や歩行器を使うのは嫌だなぁ」という抵抗感がある方には、ぜひご検討いただきたいです。


以下で「WIM S」の詳細や無料体験について説明をしていますので、ご覧ください。



家族は歩くことを止めるより、困っている場面を一緒に確かめる

高齢女性と家族が歩道の段差を一緒に確認している様子

家族が歩行の変化に気づいた場合は、危険を避けることだけでなく、本人がどの場面を不安に感じ、どのような生活を続けたいと思っているかを確かめることが重要です。


家族から見ると危なそうな歩き方でも、本人は「まだ一人で歩ける」と考えていることがあります。


反対に、家族からは大きな変化が見えなくても、本人が強い不安を感じている場合もあります。


そのため、「危ないから歩かないで」「杖を使いなさい」と結論だけを伝えるのではなく、本人が何に困っているのかを確かめます。


たとえば、次のように具体的に聞きます。


  • 家の中と外では、どちらが怖い?

  • 立ち上がるときと歩いているときでは、どちらが不安?

  • 足が痛い、力が入らない、ふらつくなどの感覚はある?

  • 転んだときのことを思い出して怖い?

  • どこまでなら自分で歩きたい?

  • また行けるようになりたい場所はある?


家族が先回りしてすべてを介助すると、本人が安全に行える動作まで行う機会が減る可能性があります。


一方で、危険な状態の人へ無理に歩行を促すことも適切ではありません。


国際ガイドラインでは、転倒予防の計画に、本人の目標、価値観、希望を反映することが推奨されています。


本人が続けたい生活を確認し、そのために必要な医療、リハビリ、環境整備、補助具を一緒に考えます。


補助具を嫌がる場合も、「年寄りに見えるから」と決めつけないようにします。長さが合わない、手が痛い、扱いにくい、以前に使って怖い思いをしたなど、用具そのものに理由があるかもしれません。


用具側の問題が考えられる場合は、商品を買い替えるより先に、本人の歩き方と使用場所を確認します。可能であれば、専門店やリハビリの場で実物を試してから選びましょう。



まとめ|不安をなくすより、安全に歩ける方法を見つける


高齢者の歩行への不安には、身体状態、生活環境、転倒への怖さなど、複数の要因が関係します。不安を我慢するのでも、歩くことをすべて止めるのでもなく、何が不安につながっているのかを整理して対策を選びましょう。


歩行への不安を感じたときは、次の順に考えます。


  • 急な身体変化がないかを確認する

  • いつ、どこで、何が不安なのかを整理する

  • 痛みやふらつき、薬、身体機能を確認する

  • 住環境と靴を見直す

  • 安全を確保しながら必要な活動を続ける

  • 杖、歩行器、歩行支援機器などから必要な支え方を選ぶ


目標は、不安を無理に我慢することでも、転倒を恐れて歩くことをすべて止めることでもありません。


歩くことに不安を感じるようになると、「気が弱くなった」「情けない」と感じる方もいます。


けれど、転ぶかもしれないと考えることは、危険を避けるために働いている反応でもあります。急な坂道を避ける、暗い場所では慎重になるといった判断は、その不安があるから生まれています。


この記事で確認してきたのは、不安をなくす方法ではありません。いつ、どこで、何が起きているのかを分けて見ることでした。それが分かると、避けたほうがよいことと、続けてよいことが見えてきます。


歩ける距離が以前より短くなったとしても、行きたい場所や続けたい生活まで手放す必要はありません。何を残したいかを決めるのはご本人です。


安全に歩ける方法を医療職、リハビリ専門職、介護保険の福祉用具を扱う福祉用具専門相談員などと一緒に検討して、ご本人が続けたい生活ができるように考えてみてください。

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