高齢者の歩行速度の平均は?年代別の参考値と測り方、数字の見方
高齢者の歩行速度は、年代や測り方によって異なります。一例として、国立長寿医療研究センターの調査では、70〜79歳の普段の歩行速度は男性で約1.39m/秒、女性で約1.35m/秒でした。
ただし、平均は「この速さで歩けなければいけない」という目標ではありません。年代別の参考値を知り、同じ条件で測り、以前の自分との変化を見る。この順番で考えると、数字を日々の暮らしに生かしやすくなります。
この記事では、平均値、測り方、結果の受け止め方を順に紹介します。
高齢者の歩行速度の平均は?年代別の参考値を確認
歩行速度には、いつものペースで歩く「通常歩行速度」と、できるだけ速く歩く「最大歩行速度」があります。以下は、普段の速さにあたる通常歩行速度の平均です。
年代 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
60〜69歳 | 約1.45m/秒 | 約1.41m/秒 |
70〜79歳 | 約1.39m/秒 | 約1.35m/秒 |
80歳以上 | 約1.22m/秒 | 約1.18m/秒 |
国立長寿医療研究センター「老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」第9次調査(2018年10月〜2022年2月)の通常歩行速度の集計から、m/分を60で割り、小数第2位までに換算しています。表の人数は男性が順に253人・237人・123人、女性が253人・196人・112人です。60〜69歳の区分には、65歳未満の人も含みます。
この調査は、愛知県の地域住民から始まった研究の既参加者を追跡したものです。年齢区分が高いほど平均値が低くなっています。ただし、全国の高齢者全員を代表する平均でも、一人ひとりの「正常範囲」を示す表でもありません。同じ年代の中にも違いがあるため、数値だけで歩く力の良し悪しを決めないことが大切です。
平均が違う資料は、調べた人・時期・測り方を確認する
別の記事や資料で違う平均を見かけても、どちらかが間違いとは限りません。対象者の年齢、健康状態、調査時期に加え、普段の速さか最速か、歩き始めから測るか助走をつけるかによっても結果は変わります。
たとえば「65歳以上」の平均と「80歳以上」の平均は、そのまま比べられません。数字を比べる前に、誰の、どのように測った値なのかをそろえるのが基本です。上の集計表だけでは測定距離などの詳細までは分からないため、次に紹介する測り方と同一条件だとは扱いません。
自分の歩行速度を測るときは、普段の速さと測定条件をそろえる
健康診断やリハビリで歩行速度を測った記録があれば、まずはその記録を見てみましょう。自宅で測り直すことが必須ではありません。自分で測る場合も、平均を超えようと急ぐのではなく、いつものペースを記録することが目的です。
平らな直線と計測する人を確保し、無理な測定はしない
平らで障害物がなく、十分な長さのある場所を選び、時間を測る人に付き添ってもらいます。普段使っている杖などは、数字を良く見せるために外さないでください。
痛みやふらつきがある、直線の場所が取れないといった場合は、家庭での測定を無理に行わず、医療機関などで相談する方法があります。
突然歩けなくなった、顔や片側の手足に異常がある、言葉が出にくいなどの症状があるときは、測定よりも119番への連絡を優先してください。
歩いた距離をかかった秒数で割る

歩行速度は、次の計算で求められます。
歩行速度(m/秒)=計測した距離(m)÷かかった時間(秒)
たとえば5mを5秒で歩いた場合は、5÷5=1.0m/秒です。これは計算例であり、この値だけで健康状態を判定するものではありません。
測定方法の一例に、歩き始めの3m、時間を測る5m、歩き終わりの3mを取る方法があります。高齢者を対象にした研究でも使われている方法で、合計11mの直線が必要です。その研究では、体幹が計測区間の始点と終点を通過するまでの時間を測っています。
歩き始めから測る方法とは条件が違うため、途中で方法を変えた記録を直接比べないようにします。場所が足りないからといって、途中で折り返した時間を同じ条件の値として扱うこともできません。
靴・杖・測り方・体調も一緒に記録する
数値だけでなく、次の情報も残しておくと、後から比べやすくなります。
測定日と、計測した距離・時間
普段の速さで歩いたか、歩き始めの区間を別に取ったか
靴、杖などの使用状況
当日の痛み、疲れ、ふらつきなど
毎回違う条件で測るより、同じ方法の記録を積み重ねるほうが変化を捉えやすくなります。わずかな数値差をすぐに改善・悪化と決めるのではなく、「以前と同じ道を歩くのがつらくなった」といった実感も一緒に残しましょう。
平均より遅いときは、評価の基準と生活の変化を分けて考える

平均より遅かったとしても、それだけで病気や要介護の状態と決まるわけではありません。反対に、平均を上回っていても、最近急に歩きにくくなったなら、その変化は別に考える必要があります。
「1.0m/秒未満」は平均ではなく、評価項目の一つ
「歩行速度1.0m/秒未満」という数字を見かけることがあります。これは、2020年改定日本版CHS基準(J-CHS基準)で、身体の衰えを評価する際に使う項目の一つです。
この基準は、歩行速度に加え、体重減少、筋力低下、疲労感、身体活動の低下という5項目を組み合わせます。3項目以上に該当する場合をフレイル、1〜2項目をプレフレイルとします。
つまり、年代別の平均と、評価に使う境目は別の数字です。家庭で測った歩行速度一つから、フレイルや病気だと自己判断するためのものではありません。
以前より歩きにくい・外出で困るときは、記録を添えて相談する
相談するときに役立つのは、「平均より遅い」という情報だけではありません。
いつ頃から歩きにくくなったか
痛みやふらつき、転んだ経験があるか
買い物や外出など、以前できていたことで困っていないか
こうした変化を、測定記録があればそれと一緒に、かかりつけ医やリハビリの専門職へ伝えます。数字を良くすることを急ぐより、歩きづらさの背景と生活上の困りごとを整理するほうが、次の対応につながります。
平均を目標に急がず、自分に合う活動で歩く力を保つ
歩く力を保つための活動は、速く歩く練習だけではありません。厚生労働省の高齢者向け身体活動・運動の考え方でも、体力に合わせた身体活動に加え、筋力やバランスなどを含む多様な運動が勧められています。
まずは、普段の暮らしで続けやすい活動を考えてみてください。無理なく歩ける人なら、座っている時間の合間に体を動かす、近所への外出を日課にするなど、今の生活から始められることがあります。運動の内容や量に迷う場合は、自分の体力や持病に合う方法を相談して決められます。
また、日々歩く場所を整えることも、活動を続けるための準備です。
日々の歩行をサポートするWIM Sとは

散歩や買い物など、普段の歩行を支える製品の一つに「WIM S(ウィム・エス)」があります。腰と脚に装着する歩行支援ロボットで、自分の足で歩ける方の歩行を補助する製品です。
WIM Sは医療機器ではなく、病気の診断や治療のためのものではありません。また、この記事で紹介した平均値や1.0m/秒という数字で、利用に向くかどうかが決まるわけでもありません。
検討する際は、使いたい場面を伝え、装着感や操作方法、自分に合う使い方を確かめることが出発点になります。WIM Sの製品情報で特徴をご覧いただけます。
歩行速度の平均についてよくある質問
Q1:スマートフォンなどで出た歩行速度も、同じ平均と比べられますか?
A:表示される単位だけでなく、測定方法や場面も見る必要があります。日常の移動中に得られた値と、決められた直線を普段の速さで歩いた値は、同じ条件とは限りません。同じ機器・方法での自分の変化を見る記録として活用し、研究の平均との単純な比較は避けましょう。
Q2:1.0m/秒より遅いと、フレイルや病気と決まりますか?
A:決まりません。J-CHS基準では歩行速度は5つの評価項目の一つです。平均より速いか遅いかとは分けて考え、歩きにくさや生活の変化も含めて評価します。
Q3:杖を使っている場合、外して測ったほうがよいですか?
A:数字を比べるために、普段必要な杖を外す必要はありません。使用した補助具を記録し、同じ条件での変化を見ます。医療機関などで測る場合は、その場の測定方法と専門職の指示に従ってください。
Q4:歩行速度の「m/秒」は、時速に直すとどれくらいですか?
A:m/秒の値を3.6倍するとkm/時になります。1.0m/秒なら時速3.6kmです。ただし、短い区間で測った速度を長時間保てるとは限らず、目的地までの所要時間や横断歩道を渡れるかの判断に、そのまま使うことはできません。
まとめ|平均は参考に、測定条件と自分の変化を確かめよう
高齢者の歩行速度の平均は、調べた年代や測定条件によって異なります。参考値を知ることは役立ちますが、平均を超えること自体を目標にする必要はありません。
大切なのは、普段の速さを同じ条件で記録し、以前の自分や生活の変化と合わせて見ることです。歩きにくさや外出での困りごとが増えたときは、その記録を相談に役立てながら、自分に合う活動や支え方を考えていきましょう。




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