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リハビリ用歩行器とは?回復段階別の使い分けと退院後の準備

GLOBIZ WELLNESS
8月20日
読了時間: 13分

更新日:8月28日



病院や施設で歩行器を使い始めると、このような疑問を持つご本人やご家族は少なくありません。


歩行器は、立った姿勢を安定させたり、足に体重をかける練習をしたりするために使われます。ただし、支える力が強い歩行器を選べばよいわけではありません。身体の状態やリハビリの目的、使用する場所によって適したタイプは異なります。


また、病院内で使いやすかった歩行器が、そのまま自宅でも使いやすいとは限りません。退院後も歩行器が必要になる場合は、自宅の広さや段差、生活動線まで考えて準備する必要があります。


本記事では、リハビリにおける歩行器の役割から、回復段階に応じた使い分け、病院から自宅へ移る際の準備までを解説します。


リハビリ用歩行器とは?一般の歩行器との違い


医療や介護の現場では「リハビリ用歩行器」と呼ばれることがありますが、すべての製品に共通する「リハビリ専用」という統一的な区分があるわけではありません。


一般的な歩行器や歩行車の中から、身体状態や訓練の目的に合うものを選び、リハビリの中で使用するのが実際に近い考え方です。同じ製品が、病院での歩行練習にも、退院後の日常生活にも使われることがあります。


そのため、大切なのは名称ではなく、どの部分をどの程度支える必要があるか、本人が安全に操作できるか、使用する環境に合っているかです。


歩行器全体の役割や選び方を知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。


リハビリにおける歩行器の役割

理学療法士が見守る中、リハビリ室で歩行器を使って歩行練習をする高齢者

リハビリで歩行器を使う目的は、転倒への不安を抑えることだけではありません。身体を支えながら立つ・体重を移す・足を運ぶといった動作を練習し、病室やトイレなど実際の移動へつなげる役割があります。


リハビリでは、歩行器を主に次のような目的で使用します。


  • 立った姿勢を安定して保つ

  • 左右への体重移動を練習する

  • 足に体重をかけながら立つ、歩く

  • 足を前へ運ぶ動作を繰り返す

  • 安全を確保しながら歩行距離を広げる

  • 病室内やトイレなど、日常の移動につなげる


歩行器は転倒を防ぐためだけの道具ではありません。身体を支えながら歩く動作を繰り返し、必要な場所へ移動できる範囲を広げる役割もあります。


ただし、歩行器を使わなくなることが、すべての人に共通するゴールではありません。


回復に応じて杖などへ移る人もいれば、安全に生活するために歩行器を長く使う人もいます。大切なのは補助具から卒業することではなく、本人が必要な移動や活動を安全に続けられる状態をつくることです。


リハビリでよく使われる歩行器のタイプ


次の章で「回復段階ごとの使い分け」を説明する前に、登場する歩行器のタイプをざっと押さえておきましょう。ここでは名前と特徴だけを簡単に紹介します。

タイプ

簡単な特徴

①固定型歩行器

車輪がなく、持ち上げて一歩ずつ進む。安定感が高い

②交互型歩行器

左右のフレームを交互に動かして進む

③キャスター付き歩行器

本体を持ち上げず、車輪を転がして進む

④前腕支持型・馬蹄型

前腕(ひじから手首)や上半身を広く支える

⑤サイドウォーカー

体の片側を支えるために使われることがある

⑥四輪歩行車

連続した歩行や屋外での移動に使われることがある



それぞれの詳しい構造やメリット・注意点は、こちらの記事で解説しています。



【回復段階別】リハビリで使う歩行器はどう変わる?

急性期・回復期・生活期における歩行器の役割と選び方の視点を整理した図


リハビリでは、回復の段階が進むにつれて、使う歩行器も変わっていくのが一般的です。ここではその流れを「急性期」「回復期」「生活期」の3段階に分けて見ていきます。


【補足】

以下は一般的な流れです。すべての方が同じ順序で進むわけではありません。疾患や手術の内容、麻痺の有無、痛み、体重をかけてよい範囲(荷重制限)などによって、適した用具は変わります。実際の選択は必ず医師やリハビリの専門職の指示に従ってください。



入院直後・急性期|安全に立ち、身体を支える


急性期とは、発症や手術の直後に、治療と並行して初期のリハビリを行う時期です。


この段階では、長い距離を歩くことよりも、まずは安全に起き上がり、立った姿勢を保つことが優先されます。


状態に応じて、次のような練習が行われます。


  • ベッドから起き上がり、座った姿勢を保つ

  • 手すりや平行棒につかまって立つ

  • 左右の足へ少しずつ体重を移す

  • 必要な範囲で患側の足に体重をかける

  • 歩行器を使い、一歩ずつ足を前へ出す


平行棒は歩行器ではありませんが、安定した環境で立位や歩行を練習するため、歩行器を使う前の段階で用いられることがあります。


歩行器では、固定型や前腕支持型など、身体を支えやすいものが候補になる場合があります。ただし、「急性期だから固定型」と一律に決まるわけではありません。


例えば「急性期」で「重度な症状」であれば、前腕支持型や馬蹄型歩行器が実際に病院でよく使われます。


回復期|歩く距離と生活動作を広げる


回復期とは、状態が安定し、日常生活へ戻るためのリハビリを本格的に行う時期です。


立つ、足を前へ出すといった基本動作が安定してきたら、歩行距離や移動できる場所を少しずつ広げます。


この時期には、次のような練習が行われます。


  • 病室やリハビリ室まで歩く

  • 歩行中に立ち止まる

  • 曲がり角で方向転換する

  • 椅子やベッドへ安全に近づく

  • トイレなど、実際の生活場面で移動する

  • 疲れた状態でも姿勢を保てるか確認する


回復期では、身体機能の回復に合わせて、徐々に歩行器による支持を減らし、自分の力で歩くことを目指していきます。 まだ身体を大きく支える必要がある場合には前腕支持型やキャスター付き歩行器を使用し、歩行が安定してくると固定型や交互型歩行器へ変更することがあります。


ただし、支えが少ない歩行器へ変更すること自体が目的ではありません。


歩行器に身体を預ける量、ふらつき、足の運び、方向転換、疲労時の安定性などを確認し、現在の状態に適した支持方法を選ぶことが大切です。



退院後・生活期|自宅環境と日常の移動に合わせる


生活期とは、退院後に自宅や地域で生活しながら、必要な移動や活動を続けていく時期です。


病院では広く平らな廊下を歩くことが多い一方、自宅には狭い通路や敷居、家具、方向転換が必要な場所があります。


そのため、病院で使いやすかった歩行器が、自宅でもそのまま使いやすいとは限りません。


退院後は、次のような視点で歩行器を見直します。


  • 玄関から寝室やトイレまで通れるか

  • 狭い廊下や曲がり角で方向転換できるか

  • 敷居や小さな段差を越えられるか

  • 家具や手すりと干渉しないか

  • 屋外でも使う場合、坂道や路面に対応できるか

  • 使用しないときの保管場所があるか


屋内では小回りの利く固定型歩行器を使い、屋外ではブレーキや座面の付いた歩行車を使うなど、場所によって使い分ける場合もあります。


身体状態や生活範囲が変わった場合は、同じ歩行器を使い続けるのではなく、高さや機種が合っているかを改めて確認しましょう。


「歩行姿勢を見直しながら歩く距離延ばしながら日常生活を保っていく」回復期と生活期にはWIMSという選択肢もあります。



見落としやすい「病院から自宅へ」の切り替え


退院後も歩行器が必要になる場合、本人や家族が早めに確認したいのが、自宅で使用する歩行器の準備です。病院で使用している歩行器が施設の備品であれば、通常はそのまま自宅へ持ち帰ることはできません。


また、病院で使ったものと同じ機種を用意すればよいとも限りません。病院と自宅では、通路の広さ、床面、段差、家具の配置、移動する距離が異なるためです。


退院後も必要か、早めに相談する


退院後も歩行器が必要になる見込みがある場合は、退院の見通しが立った段階で、病院のリハビリ担当者や退院支援担当者へ相談しましょう。


確認したいのは、退院時にどの程度の支えが必要と見込まれるか、自宅のどこで使うか、家族の見守りが必要か、購入とレンタルのどちらが適しているかなどです。退院直前では試用や調整の時間を確保しにくいため、早めの相談が役立ちます。


自宅の情報を具体的に伝える


歩行器を自宅で使えるか判断するには、生活動線の情報が必要です。次のような場所を確認しておきましょう。


  • 玄関から寝室、トイレ、食卓までの通路幅

  • 曲がり角やドアの開閉に必要なスペース

  • 敷居、玄関、屋外までの段差

  • 床にあるマットや電気コード

  • 家具や手すりとの位置関係

  • 屋外でも使う場合の坂道や路面


写真や動画を撮り、廊下やドアの幅を測ってリハビリ担当者や福祉用具専門相談員へ見せると、自宅の状況を伝えやすくなります。


できれば自宅で試し、動線まで確認する


カタログ上の幅や高さが合っていても、実際には曲がり角で向きを変えられない、トイレへ入れない、キャスターが敷居に引っかかるといった問題が起こることがあります。


候補の歩行器を試せる場合は、立って数歩進むだけでなく、停止、方向転換、ドアの通過、椅子への着座まで確認しましょう。屋内と屋外の両方で使う場合は、1台でまかなうことにこだわらず、使い分けも検討します。


自宅での歩行器の使いやすさをひとつずつ確認していくよう伝える女性キャラクター

退院後の歩行器を介護保険で準備する流れ


自宅で使用する歩行器は、介護保険の福祉用具貸与を利用して準備できる場合があります。


一般的には、次のような流れで進みます。


  • 病院のリハビリ担当者や退院支援担当者に相談する

  • ケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談する

  • 福祉用具専門相談員に身体状態と住環境を伝える

  • 候補となる歩行器を実際に試す

  • 自宅の動線や段差で使用できるか確認する

  • 納品時に高さや操作方法を調整してもらう

  • 使用後に問題があれば機種や設定を見直す


すでにケアマネジャーがいる場合は、まず担当者に相談します。要介護認定を受けていない場合は、地域包括支援センターや市区町村の介護保険窓口が相談先になります。


介護保険の適用条件や自己負担額、対象となる製品は、認定状況や制度の運用によって確認が必要です。


詳しい仕組みについては、以下の記事をご覧ください。



リハビリ用歩行器を安全に使うための注意点

歩行器を安全に使うために確認したい高さや身体との距離など5つのポイントを示す図

歩行器は、本人の身体状態に合ったものを正しく使用してはじめて、安全な移動につながります。


ここでは、使用時に確認したい基本的なポイントを紹介します。


身体に合わせて高さと支持位置を調整する


グリップや前腕支持部が高すぎたり低すぎたりすると、肩が上がる、腰が曲がる、歩行器を身体から離してしまうなど、姿勢が崩れる原因になります。


一般的な高さの目安だけで決めず、本人の姿勢や疾患、腕の使い方に合わせて調整してもらいましょう。


歩行器と足を動かす順序を守る


固定型や交互型など、歩行器のタイプによって動かし方は異なります。


また、手術後やけがの状態によっては、どちらの足から出すか、どの程度体重をかけてよいかについて個別の指示が出ることがあります。


病院で練習した手順を、自己判断で変えないようにしましょう。


歩行器を身体から離しすぎない


歩行器だけを遠くへ出すと、身体が前かがみになり、歩行器の支えを十分に使えなくなります。


特にキャスター付きのタイプは、車輪だけが先へ進まないよう注意が必要です。


歩行器の支持範囲から身体が外れない位置を保ちながら進みましょう。


自宅のつまずきやすい物を減らす


床に置いた電気コードや小さなマットは、歩行器の脚やキャスターが引っかかる原因になります。


自宅で使用する場合は、次のような環境を確認してください。


  • 電気コードを通路から外す

  • めくれやすいマットを片付ける

  • 床に物を置かない

  • 夜間の移動経路を明るくする

  • 滑りにくく、かかとのある履物を使用する


歩行器だけを準備するのではなく、歩行器で通れる環境をつくることも重要です。


痛みや疲れ、ふらつきを我慢しない


疲労が強くなると、足が上がりにくくなったり、歩行器だけが先へ進んだりすることがあります。


痛みや息切れ、めまい、いつもより強いふらつきがある場合は、無理に練習を続けないでください。


また、先ゴムの摩耗、キャスターの動き、ネジの緩み、ブレーキの効きなど、歩行器本体の状態も定期的に確認しましょう。


自分の力で歩き続けるための新しい歩行支援


リハビリのゴールの一つは、「自分の足で歩く力を保つ・取り戻す」ことです。この目的に対して、従来の歩行器とは異なるアプローチの製品も登場しています。


装着型の歩行支援ロボットという選択肢です。


  • 従来の歩行器は、フレームに体を預けて歩行を支える

  • 装着型ロボットは、体に装着して脚の動きそのものをアシストする

  • 両手を空けた状態で使用できる製品もある

  • 目的や身体状態によって、歩行器とは異なる支援方法も検討できる


たとえば装着型の歩行支援ロボット「WIM S」は、腰に装着して足の振り出しをアシストする約1.6kgの軽量タイプです。フレームに寄りかかるのではなく、自分の足で歩く動作を引き出すことを目指した製品です。


ただし、こうした機器はすべての方に適しているわけではありません。歩行器の代わりになるものでも、回復を保証するものでもなく、あくまで歩行動作を支える新しい選択肢です。導入を検討する際は、必ず医療・リハビリの専門職に相談してください。


リハビリ用歩行器に関するFAQ


A:明確な区分はありません。「リハビリ専用」という製品カテゴリがあるわけではなく、同じ歩行器を目的や場面に応じて使い分けているのが実際です。大切なのは名称ではなく、使う方の身体状態に合っているかどうかです。

A:同じタイプが適している場合もありますが、必ずしもそうとは限りません。病院と自宅では、廊下の広さや段差などの環境が異なるためです。退院前に、病院のリハビリ担当者や福祉用具専門相談員に相談して確認しましょう。

A:決まった期間はありません。回復して杖などへ移行する方もいれば、長く使い続ける方もいます。身体状態によって変わるため、定期的に専門職と見直すことをおすすめします。

A:自己判断での切り替えは避けてください。歩行の安定性や体を支える力が十分かどうかは、専門職による評価が必要です。焦って移行すると転倒のリスクが高まります。

A:はい、早めの準備をおすすめします。病院の歩行器は備品で持ち帰れないことが多く、退院直前に慌てるケースが少なくありません。退院日が決まる前後から、自宅で使う歩行器の相談を始めると安心です。

A:練習の内容や段階によります。自己判断で無理な練習をすると転倒につながるおそれがあるため、どこまで一人で行ってよいかを、必ずリハビリの担当者に確認してから進めてください。

A:歩行器は介護保険の福祉用具貸与の対象で、要支援1の方から原則レンタルできます。自己負担は所得に応じて1〜3割です。詳しい手続きについては以下の記事をご覧ください。




【まとめ】回復段階だけでなく退院後の生活まで考えて選ぼう


リハビリで使う歩行器は、単に転倒を防ぐための道具ではありません。


立った姿勢を保ち、足に体重をかけ、歩行距離や生活範囲を広げていくための補助具です。


回復段階によって歩行器に求められる役割は変わることがありますが、すべての人が同じ順序で固定型からキャスター付き、杖へ進むわけではありません。


本人の身体状態やリハビリの目的、操作能力、使用環境を合わせて判断することが大切です。


また、退院後も歩行器が必要な場合は、病院の歩行器をそのまま持ち帰れるとは限りません。退院の見通しが立った段階で専門職へ相談し、自宅の廊下や段差、生活動線に合った歩行器を準備しましょう。


目標は、歩行器を使わなくなることではありません。


歩行器や新しい歩行支援機器を適切に活用しながら、本人が必要な場所へ安全に移動し、自分らしい生活を続けられることが何より重要です。


回復の道のりは一人ひとり違います。目の前の段階だけでなく、退院後の生活まで見据えて、専門職と相談しながら無理のない一台を選んでいきましょう。

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