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正しい杖の使い方|持つ手・長さ・歩き方から階段の上り下りまで解説

GLOBIZ WELLNESS
3 日前
読了時間: 21分
杖の使い方を専門職と確認する場面のイメージ

杖を買おうと決めたものの、



と迷う方は多いのではないでしょうか。杖は、正しく使ってこそ歩くときの支えになります。


反対に、長さや持つ手が合っていないと、かえって姿勢が崩れることもあります。たとえば、杖を身体から遠くにつくと、上半身が前に傾きやすくなります。


この記事では、杖の長さの合わせ方、持ち方、平地での歩き方、階段の上り下りまで順番に解説します。杖選びの全体像を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。


大切な注意点

この記事では、一般的な杖の使い方を紹介しています。病気やけが、手術後の状態によっては、医師や理学療法士から別の方法を指示されることがあります。その場合は、医療職の指示を優先してください。


杖の使い方の基本|使い始める前に知っておきたいこと


杖はバランスを補い脚の負担を減らす。T字杖は軽く扱いやすく、多点杖は平らな床で安定する。強いふらつきや術後は使用前に専門職へ相談する。

杖を正しく使うには、まず杖が「何をしてくれる道具か」を知っておくことが大切です。杖は、歩く力そのものを生み出す道具ではありません。床につく支点を1つ増やし、バランスや脚への負担を補う道具です。


この前提を知らずに使うと、杖に寄りかかりすぎたり、合わない場面で無理に使ったりしがちです。たとえば、杖に体重を預けないと一歩が出ない状態なら、杖以外の補助具が合う可能性があります。


ここでは、杖の役割、T字杖と多点杖での違い、自己流で使う前に相談したいケースを整理します。基本を押さえておくと、この後の持ち方や歩き方もぐっと理解しやすくなります。杖を手にする前に、ひとつずつ確認しておきましょう。


杖の役割はバランスと脚への負担を補うこと


結論として、杖の役割は「バランスを補うこと」と「脚への負担を減らすこと」の2つです。人は立っているとき、左右の足で身体を支えています。杖をつくと、身体を支える点が1つ増えます。これを「支持基底面が広がる」と言います。


支持基底面とは、足や杖に囲まれた、身体を支えている床の範囲のことです。この範囲が広がるほど、姿勢は安定しやすくなります。


たとえば、膝に痛みがある方が杖を使うと、痛い脚にかかる体重の一部を杖に分けられます。


ただし、一般的なT字杖は、全体重を預けるための道具ではありません。「少し支えを足す道具」と考えておくと、正しい使い方につながります。杖に頼りすぎず、自分の脚でも身体を支える意識を持ちましょう。


T字杖と多点杖で異なる使い方のポイント


4点杖のグリップ・支柱と、4つの杖先の構造を示したイラスト

杖の基本的な使い方は同じですが、T字杖と多点杖では注意点が少し異なります。T字杖は杖先が1点で、軽く扱いやすいのが特徴です。多点杖は杖先が3〜4本に分かれ、平らな床では安定しやすい杖です。


一方、段差や傾斜では杖先がそろわず、ぐらつくことがあります。たとえば多点杖は、すべての杖先を床につけてから体重をかけるのが基本です。どちらを選ぶかは、次を目安にしてください。

  • 軽いふらつきや片脚の痛みを補いたい → T字杖

  • 平らな屋内で、T字杖ではふらつきが残る → 多点杖

  • 両手で身体を支える必要がある → 歩行器を検討


どちらの杖でも、身体に合った長さと持ち方がそろってこそ支えになります。多点杖の選び方や使い方は、こちらの記事で詳しく解説しています。



自己流で使う前に専門職へ相談したいケース


結論として、次のような方は、自己流で使い始める前に専門職へ相談しましょう。ここでの専門職とは、医師や理学療法士、福祉用具専門相談員などを指します。理由は、身体の状態によって、合う杖や歩き方が大きく変わるからです。

  • 杖を持っても強くふらつく、転倒を繰り返している

  • 手術後で、脚にかけてよい体重を制限されている

  • 脳卒中などで、片側に麻痺がある

  • 手や肩に痛みがあり、杖を握り続けにくい


たとえば手術後は、脚にかけてよい体重を細かく指示されることがあります。これを「荷重制限」と言います。こうした場合、一般的な使い方はそのまま当てはまりません。


また、急に手足に力が入らなくなった場合は、杖より先に医療機関の受診を優先してください。


杖の長さの合わせ方と持ち方・握り方


杖を買ったら、最初にするべきことは長さの調整です。長さ、持つ手、握り方の3つがそろって、はじめて杖は支えとして働きます。どれか1つでもずれていると、杖に体重をかけにくくなり、姿勢も崩れやすくなります。


たとえば、杖が長すぎると肩が上がり、短すぎると前かがみになります。お店で合わせてもらった場合も、自宅で普段の靴を履いて確認し直すと安心です。


ここでは、長さの目安、腰が曲がっている方の調整、左右どちらの手で持つか、正しいグリップの握り方を順番に解説します。杖を使い始める前のチェックリストとして活用してください。一度の調整で終わりにせず、しばらく使ってから見直すことも大切です。


杖の長さは靴を履いた状態で調整


普段の靴で手首の高さを目安に測り、杖を持って肘が軽く曲がる姿勢を確認する2場面。

結論として、杖の長さは、普段履く靴を履いて自然に立った状態で合わせます。理由は、靴底の厚さだけでも数センチの差が出るからです。素足や室内履きで合わせると、外出時に長さが合わなくなることがあります。


たとえば、室内ではスリッパ、外では厚底の靴という方は、場面ごとに確認が必要です。伸縮式の杖なら、使う場所に合わせて長さを変えられます。


調整するときは、1人で行うより家族に見てもらうのがおすすめです。杖先の位置や肘の角度は、自分では確認しにくいからです。次の目安を参考に、ご本人がいちばん歩きやすい長さを探しましょう。数値だけで決めず、実際に歩いて確かめることが大切です。


長さの目安(手首の高さ・肘の角度30度前後)


長さの目安は2つあります。1つ目は、腕を自然に下ろしたときの手首の高さです。手首のしわのあたりに、グリップの上端が来る長さを目安にします。


2つ目は、杖をついたときの肘の角度です。杖先を、足の小指から前へ約15cm、外側へ約15cmの位置につきます。このとき、肘が30度ほど軽く曲がる長さが目安です。


「身長÷2+2〜3cm」という計算式もよく紹介されています。たとえば身長160cmの方なら、計算上は82〜83cmが目安です。ただし、腕の長さや姿勢には個人差があるため、あくまで参考値と考えましょう。


最後は実際に歩いてみて、肩が上がらないかを確認してください。違和感があれば、1段階ずつ長さを変えて試しましょう。


腰や背中が曲がっている場合の調整


腰や背中が曲がっている方は、身長から計算した長さが合わないことがあります。結論として、計算式よりも「いつもの姿勢で立ったときの手首の高さ」を優先しましょう。理由は、背中が丸くなると、手の位置も下がるからです。計算どおりの長さにすると杖が長すぎて、肩が持ち上がってしまいます。


たとえば、前かがみの姿勢が強い方は、計算より数センチ短い杖が合うことがあります。ただし、無理に背すじを伸ばした姿勢で合わせるのは避けましょう。実際に歩くときの姿勢と合わず、かえって使いにくくなります。


姿勢が大きく変わってきた場合は、理学療法士に相談しながら長さを決めると安心です。姿勢は年月とともに変わるため、定期的な見直しも欠かせません。


杖を持つのは痛みや弱さがある脚と反対側の手


左脚に痛みや弱さがある例で、反対側の右手に杖を持つ後ろ姿。

結論として、杖は、痛みや弱さがある脚と反対側の手で持つのが基本です。右脚が痛いなら左手、左脚が痛いなら右手で持ちます。


理由は、人が歩くとき、脚と反対側の腕が自然に前へ出るからです。反対側の手で杖を持つと、この自然な動きに近いリズムで歩けます。さらに、杖と痛い脚が一緒に体重を受け止めるため、痛い脚への負担を分けやすくなります。


たとえば、右膝が痛い方が右手で杖を持つと、身体が右側に傾きやすくなります。「痛い脚の側で支えたい」と感じる方は多いですが、実は反対側が基本です。


迷ったら「杖は元気な脚の側の手」と覚えておきましょう。まずは持つ手を正しく決めることが、杖を使いこなす第一歩です。


両脚に症状がある場合・手や肩に痛みがある場合


両脚に痛みがある場合や、杖を持つ手に痛みがある場合は、基本の持ち方が合わないことがあります。結論として、こうしたケースは自己判断せず、理学療法士などに相談しましょう。理由は、症状の強さや左右差によって、合う持ち方が変わるからです。


たとえば両膝が痛いなら、より痛みが強い脚の反対側の手で持つのが一般的です。ただし左右差が小さい場合は、2本杖や歩行器のほうが合うこともあります。


また、杖を持つ側の手首や肩が痛む場合は、グリップの形を見直すと楽になることがあります。手のひら全体で支えられる形のグリップも候補です。無理に基本どおりにせず、身体に合う方法を探しましょう。


正しいグリップの握り方とよくある間違い


T字杖のグリップを手のひらで支え、自然な手首の向きで握る手元。

結論として、グリップは手のひら全体で包むように握り、手首をまっすぐ保つのが基本です。理由は、手首が曲がったまま体重をかけると、手首や指に負担が集中するからです。


T字杖は、人差し指と中指で杖の首の部分をはさむように握ると安定しやすくなります。グリップの向きは、メーカーの説明書に合わせましょう。よくある間違いは次のとおりです。

  • 指先だけで、軽くつまむように握る

  • 手首を内側や外側に曲げて握る

  • 杖に上から寄りかかり、肩がすくんでいる


たとえば、指先だけで握ると、体重をかけた瞬間に杖が滑りやすくなります。握り方を整えるだけで、杖の支えの感じ方は大きく変わります。購入したら、まず鏡の前で握り方を確認してみましょう。家族に横から見てもらうのもおすすめです。


平地での杖の歩き方|3動作歩行と2動作歩行


平地で左脚に症状がある例。3動作は杖、左脚、右脚、2動作は杖と左脚を同時に動かしてから右脚を動かす。

杖を使った歩き方には、大きく分けて「3動作歩行」と「2動作歩行」の2種類があります。どちらも正しい方法で、身体の状態によって向き不向きが変わります。杖を使い始めたばかりの方は、安定しやすい3動作歩行から始めるのが一般的です。慣れて安定してきたら、2動作歩行へ進むこともできます。


たとえば手術後のリハビリでは、3動作から始めて2動作へ進む流れがよく見られます。


ここでは、杖歩行の基本姿勢と杖をつく位置を確認したうえで、それぞれの手順と選び方を解説します。以下では、左脚に痛みがあり、右手で杖を持つ場合を例に説明します。ご自身の身体に置きかえながら読み進めてください。


杖歩行の基本姿勢と杖をつく位置


右手で杖を持つ例で、右足の少し前と外側の杖先位置を上から示し、目線が前を向く姿を添えた図。

結論として、杖歩行の基本は「背すじを伸ばし、杖を足の少し前外側につく」ことです。理由は、杖を遠くにつくほど、身体が前に傾いてしまうからです。前かがみになると、つまずきやすくなるだけでなく、腰にも負担がかかります。


杖をつく位置の目安は、杖を持つ側の足の小指から、前と外側へそれぞれ約15cmです。視線は足元ではなく、数メートル先に向けましょう。足元ばかり見ていると、自然と背中が丸くなります。


たとえば、杖を身体から離れた位置につくと、杖に寄りかかる姿勢になりがちです。歩き出す前に一度まっすぐ立ち、杖の位置と姿勢を確認する習慣をつけましょう。正しい姿勢は、この後に紹介する歩き方の土台になります。


3動作歩行の手順(杖→弱い側の脚→強い側の脚)


3動作歩行とは、杖と左右の脚を1つずつ順番に動かす歩き方です。結論として、安定を最優先したい方に向いた方法です。手順は次の3ステップです。

  1. 杖を前へ出す

  2. 弱い側(痛みのある側)の脚を出す

  3. 強い側の脚を出してそろえる


常に2点以上が床についているため、バランスを崩しにくいのが特徴です。一方で、1歩ごとに3つの動作が必要なため、歩く速度はゆっくりになります。


たとえば左脚が痛い方なら、「右手の杖→左脚→右脚」の順です。強い側の脚は、まず弱い側の脚にそろえる程度から始めましょう。慣れてきたら、そろえずに少し前へ出す歩き方に進むこともあります。焦らず、1歩ずつ確実に進むことが大切です。


2動作歩行の手順(杖と弱い側の脚→強い側の脚)


2動作歩行とは、杖と弱い側の脚を同時に出し、次に強い側の脚を出す歩き方です。結論として、ある程度安定して歩ける方に向いた方法です。手順は次の2ステップです。

  1. 杖と弱い側の脚を、同時に前へ出す

  2. 強い側の脚を前へ出す


普段の歩き方に近いリズムになるため、3動作歩行より速く歩けます。一方で、片脚だけで身体を支える時間があるため、より高いバランス力が必要です。


たとえば左脚が痛い方なら、「右手の杖と左脚を同時に→右脚」の順になります。杖と弱い側の脚が、そろって着地するように意識しましょう。そうすると、痛い脚への負担を杖に分けやすくなります。


ふらつきを感じたら、無理をせず3動作歩行に戻してください。


3動作歩行と2動作歩行の違いと選び方


結論として、迷ったら3動作歩行から始め、安定してきたら2動作歩行を検討するのが基本です。3動作歩行は安定性が高い反面、歩く速度は遅めです。2動作歩行は速く歩ける反面、バランス力が求められます。


身体の状態との組み合わせで、次のように選ぶのが目安です。

  • 痛みが強い、ふらつきがある、使い始めたばかり → 3動作歩行

  • 痛みが軽い、短い距離なら杖なしでも歩ける → 2動作歩行

  • 手術後で荷重制限がある、麻痺がある → 医療職の指示に従う


たとえば、慣れた屋内では2動作、人混みや初めての道では3動作と使い分ける方法もあります。大切なのは、速さより安全を優先することです。判断に迷うときは、理学療法士に実際の歩き方を見てもらいましょう。


階段・段差・坂道など場面別の杖の使い方


平らな道で杖に慣れても、階段や坂道では同じ使い方が通用しないことがあります。高さや傾きが加わると、脚にかかる負担やバランスの取り方が変わるからです。


とくに階段は、上りと下りで脚を出す順番が逆になるため、迷いやすいポイントです。たとえば、下りで元気な脚から先に下ろすと、痛い脚だけで身体を支える場面が生まれます。


ここでは、階段の上り方と下り方、段差や坂道、方向転換の注意点を解説します。あわせて、立ち上がりや座るときの杖の扱い方も紹介します。


なお、手すりがある場所では、杖より手すりを優先して使うのが基本です。外出先で慌てないよう、自宅の階段や玄関の段差で練習しておくと安心です。


階段の上り方(杖→強い側の脚→弱い側の脚)


結論として、階段を上るときは「杖→強い側の脚→弱い側の脚」の順に進みます。理由は、段を上るときには、身体を持ち上げる大きな力が必要だからです。力のある強い側の脚を先に上の段へ乗せれば、その脚で身体を持ち上げられます。手順は次のとおりです。

  1. 杖を1段上につく

  2. 強い側の脚を上の段に乗せる

  3. 弱い側の脚を同じ段にそろえる


たとえば左脚が痛い方なら、「杖→右脚→左脚」の順です。


手すりがある場合は、手すりをしっかり握り、杖は反対の手で持つか、折りたたんで持つ方法もあります。手すりが強い側にあれば、上りも下りも使いやすくなります。


1段ずつ両足をそろえて進み、急がないことが大切です。後ろから人が来ても、自分のペースを守りましょう。


階段の下り方(杖→弱い側の脚→強い側の脚)


結論として、階段を下りるときは「杖→弱い側の脚→強い側の脚」の順に進みます。理由は、下りでは上の段に残った脚が、身体を支えながらゆっくり下ろす役目を担うからです。強い側の脚を上に残せば、その脚でしっかり身体を支えられます。手順は次のとおりです。

  1. 杖を1段下につく

  2. 弱い側の脚を下の段へ下ろす

  3. 強い側の脚を同じ段にそろえる


順番を覚えるコツとして、童謡の「行きはよいよい、帰りは怖い」がよく知られています。上り(行き)は良い脚から、下り(帰り)は痛い脚から、という意味です。


たとえば左脚が痛い方なら、下りは「杖→左脚→右脚」の順です。下りは転倒につながりやすいため、手すりがあれば必ず使いましょう。


段差・坂道・方向転換での注意点


結論として、段差や坂道、方向転換では「歩幅を小さく、ゆっくり」が基本です。理由は、こうした場面では足元の条件が変わり、バランスを崩しやすいからです。


段差は階段と同じく、上りは強い側の脚から、下りは弱い側の脚から進みます。坂道では、平地より歩幅を小さくし、杖を身体の近くにつきましょう。下り坂では身体が前に引っ張られやすいため、とくに慎重に進みます。


方向転換では、その場で足をひねって回るのは避けましょう。杖と足を小刻みに動かし、少しずつ向きを変えるのが安全です。たとえば、トイレの中など狭い場所での方向転換は、つまずきやすい場面です。手すりや壁も上手に活用しましょう。


立ち上がり・座るときの杖の扱い方


安定した肘掛け椅子に座る人と、横のホルダーで倒れにくく置いた杖。

結論として、立ち上がるときや座るときは、杖ではなく椅子の肘掛けや手すりを使うのが基本です。理由は、杖は上から体重をかける道具で、身体を押し上げる動きには向かないからです。立ち上がりで杖に強く体重をかけると、杖が滑ったり傾いたりするおそれがあります。


立ち上がるときは、まず杖を手の届く場所に立てかけておきます。肘掛けに手をついて立ち、姿勢が安定してから杖を持ちましょう。


座るときは逆の順番です。椅子の前まで進んで向きを変え、杖を置いてから肘掛けを持って座ります。


たとえば、手を離しても立つ自立式の杖なら、置き場所に困りません。立ち座りの前に杖の置き場所を決めておくと、動作が落ち着いて行えます。


杖を安全に使い続けるための注意点


身体の変化、杖の状態、倒れにくい置き場という三つの確認の視点。

杖は、一度合わせれば終わりではありません。使っているうちに杖先がすり減ったり、身体の状態が変わったりするからです。以前はちょうどよかった杖が、いつの間にか合わなくなっていることもあります。


たとえば、杖先のゴムがすり減ると、雨の日の床で滑りやすくなります。こうした変化は、毎日使っているご本人ほど気づきにくいものです。


ここでは、身体への負担や歩き方の変化の確認、杖本体の点検、杖を置くときの工夫の3つを解説します。月に1回など、確認するタイミングを決めておくと習慣にしやすくなります。小さな変化に早く気づくことが、安全に使い続けるコツです。ご家族も一緒に確認すると、見落としを防げます。


手首や肩への負担・歩き方の変化を確認


結論として、杖を使って手首や肩が痛むようになったら、使い方や杖を見直すサインです。理由は、杖の長さや握り方が合っていないと、腕に負担が集中するからです。


また、以前より杖に強く寄りかかるようになった場合は、脚の力やバランスが変わっている可能性があります。次のような変化がないか、定期的に確認しましょう。

  • 手首や肩、肘に痛みが出てきた

  • 以前より前かがみの姿勢になった

  • 歩幅が小さくなり、すり足が増えた


たとえば、家族が「最近、杖に寄りかかって歩いている」と気づくこともあります。こうした変化は、杖を買い替えるだけでは解決しないことがあります。身体の状態と補助具の両方を、専門職と一緒に見直しましょう。


杖先ゴムの摩耗と伸縮部の固定を定期的に点検


杖のグリップ、固定部、先ゴムを拡大し、傷やぐらつき、摩耗などの点検位置を示す。

結論として、杖先ゴムと伸縮部は、少なくとも月に1回は点検しましょう。杖先ゴムとは、杖の先端にはめられた滑り止めのゴムのことです。すり減ると床をつかむ力が弱まり、滑りやすくなります。点検のポイントは次のとおりです。

  • 杖先ゴムの溝が消えていないか、片減りしていないか

  • 伸縮部のボタンやロックが、しっかり固定されているか

  • グリップや支柱に、ぐらつきや曲がりがないか


たとえば、杖先ゴムの溝が薄くなっていたら交換の目安です。交換用のゴムは、メーカーや介護用品店で手に入ります。購入時に、対応する杖先ゴムのサイズを確認しておくと安心です。


伸縮部のロックがゆるいと歩行中に杖が縮むおそれがあるため、使う前に毎回確かめましょう。


杖を置くときは倒れない場所・方法を選ぶ


結論として、杖は倒れにくい場所に置き、すぐ手に取れる状態にしておくことが大切です。理由は、倒れた杖を拾おうとかがんだ瞬間に、バランスを崩しやすいからです。また、床に倒れた杖に、ご本人や家族がつまずくおそれもあります。対策としては、次のような方法があります。

  • 壁や机の角に立てかける

  • テーブルの縁に取り付けられる杖ホルダーを使う

  • 手を離しても立つ、自立式の杖を選ぶ


たとえば、外食時にテーブルへ立てかけた杖は、ちょっとした振動で倒れがちです。クリップ式の杖ホルダーがあれば、テーブルの縁に固定できます。


自宅では、玄関やベッドの横など、杖の定位置を決めておくと安心です。置き場所が決まっていれば、探し回る手間も減らせます。


杖だけでは不安なときに検討したい選択肢


杖を正しく使っても、歩くことへの不安がなくならない方もいるでしょう。杖は、あくまで身体を外側から少し支える道具だからです。「杖があっても長い距離はつらい」「脚が上がりにくくなってきた」という悩みは、杖だけでは解決しにくいものです。


たとえば、杖に強く寄りかからないと歩けないなら、支え方そのものを見直す時期かもしれません。また、「支えてもらうだけでなく、自分の脚で歩く力を保ちたい」と考える方もいます。


ここでは、目的に応じた3つの選択肢を紹介します。身体を支える歩行器、歩き方を見直すリハビリ、歩く動作を支援する装着型の機器です。ご本人の状態や目的に合わせて、組み合わせて考えてみてください。


両手で支える必要がある場合は歩行器


四脚に先ゴムのある固定型歩行器と、前輪2輪・後脚2本の歩行器の一般的な例を並べたイラスト。

結論として、杖を使ってもふらつきが強い場合は、両手で支える歩行器が候補になります。歩行器とは、両手でフレームを持ち、体重を支えながら歩くための福祉用具です。杖は片手で1点を支えるのに対し、歩行器は両手と複数の脚で身体を支えます。そのため、杖より安定した支えを得やすいのが特徴です。


たとえば、家の中で家具や壁を両手でつたって歩いているなら、歩行器が合う可能性があります。歩行器には、持ち上げて進む固定型や、車輪の付いたタイプなどがあります。屋内か屋外か、段差があるかによって、合う種類が変わります。


選ぶときは、福祉用具専門相談員に実物を試させてもらうと安心です。種類ごとの特徴は、こちらの記事で詳しく解説しています。



歩き方の練習はリハビリで専門職に相談


結論として、杖を使った歩き方に不安があるなら、リハビリで専門職に見てもらうのがおすすめです。理由は、自分の歩き方のくせには、自分ではなかなか気づけないからです。


理学療法士とは、立つ・歩くなど、身体の基本的な動きの回復を支える国家資格の専門職です。病院やクリニックのほか、介護保険のデイケアや訪問リハビリでも相談できます。


たとえば、杖の長さや持つ手が合っているか、階段を安全に上り下りできるかを実際の場面で確認してもらえます。脚の筋力やバランスを保つための運動を教わることもできます。


杖を正しく使うことと、歩く力を保つこと。この2つを並行して進めることが、長く歩き続けるための近道です。


自分の足で歩く動作を支援する「WIM S」


WIM Sを腰と脚に装着した女性

「杖で支えるだけでなく、自分の脚で歩く力を保ちたい」という方には、装着型の歩行支援ロボットという選択肢もあります。GLOBIZ WELLNESSが扱う「WIM S」は、腰と脚に装着し、脚を前に出す動作をアシストする機器です。


杖や歩行器は、床について身体を外側から支える道具です。一方、WIM Sは歩く動作そのものを後押しし、自分の脚で歩く練習を支援します。


身体に着けて使うため、杖のように片手がふさがらない点も特徴です。重さは約1.6kg、装着は約30秒と、日常にも取り入れやすい設計です。


たとえば、杖と組み合わせて歩行トレーニングに活用する使い方も考えられます。感じ方には個人差があるため、身体の状態に合うかは医師や理学療法士に相談しながら検討しましょう。


杖の使い方に関するよくある質問


杖の使い方について、よく寄せられる質問をまとめました。使い始めてから気になりやすいポイントを中心に取り上げています。気になる項目を確認し、日々の使い方に役立ててください。

A:杖を正しく使っていれば、変な癖がつく心配は少ないと考えられます。ただし、長さや持つ手が合っていないと、身体が片側に傾くなどの癖がつくことがあります。


たとえば、杖が長すぎると肩が上がり、短すぎると前かがみになりがちです。


歩き方に違和感を覚えたら、まず杖の長さと持つ手を確認しましょう。それでも気になる場合は、理学療法士に歩き方を見てもらうと安心です。早めに見直すほど、身体への負担も小さく済みます。

A:杖に抵抗を感じる方は少なくありません。そんなときは、デザインや色から選んでみるのも1つの方法です。最近は、花柄や木目調など、おしゃれな杖も多く見られます。


たとえば、洋服に合わせて杖の色を選ぶ方もいます。


大切なのは、無理に我慢して、転びやすい状態のまま歩かないことです。ご本人が使いたいと思える杖を、家族と一緒に探してみましょう。「杖を持つと外出が楽しくなった」と感じる方も少なくありません。気に入った1本が、外へ出るきっかけになることもあります。

A:杖を持つ手で荷物も一緒に持つと、グリップを握りにくくなるため避けましょう。また、反対の手に重い荷物を持つと、痛い側の脚に負担がかかりやすくなります。


荷物はリュックサックや斜めがけのバッグにまとめ、両手を空けるのがおすすめです。


たとえば、買い物が多い日は、配達サービスや家族の手を借りるのも1つの方法です。無理のない範囲で、身体への負担を減らす工夫をしましょう。杖を持たない手は、バランスを取るためにも空けておくのが理想です。

A:交換の時期は、使う頻度や場所によって変わります。期間で決めるより、杖先ゴムの状態を見て判断しましょう。


目安は、底の溝がすり減って見えにくくなったときや、片側だけが減ってきたときです。たとえば、毎日屋外のアスファルトを歩く方は、屋内中心の方より早くすり減ります。ひび割れや硬くなった感じがある場合も、交換のサインです。


交換用のゴムは、杖の太さに合うサイズを選ぶ必要があるため、購入した店舗やメーカーに確認すると確実です。予備のゴムを1つ用意しておくと、すぐに交換できて便利です。


まとめ|正しい杖の使い方は長さ・持つ手・歩く順番の3点から


杖は、正しく使ってこそ歩くときの支えになります。最後に、この記事のポイントを振り返りましょう。


まず、杖の長さは普段の靴を履いて、手首の高さと肘の角度を目安に合わせます。杖は、痛みや弱さがある脚と反対側の手で持つのが基本です。


平地では、使い始めは3動作歩行、安定してきたら2動作歩行を検討しましょう。階段は「上りは強い側の脚から、下りは弱い側の脚から」と覚えておくと安心です。杖先ゴムや身体の変化を、定期的に確認することも欠かせません。


杖だけでは不安が残る場合は、歩行器やリハビリ、WIM Sのような歩行支援機器も選択肢になります。迷ったときは医師や理学療法士に相談しながら、ご本人に合う方法を見つけてください。


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