ピックアップ歩行器とは?種類・使い方・選び方と介護保険レンタルまで解説
「杖だけでは少し心もとない」「退院後、室内を歩くときにふらつく」そんなときに候補に挙がるのがピックアップ歩行器です。
結論からお伝えすると、ピックアップ歩行器は「車輪のないフレームを持ち上げて前に置き、体重を預けながら一歩ずつ進む」ための福祉用具です。歩行器の中でも、支える力が強いタイプにあたります。
ただし、一歩ごとに本体を持ち上げる必要があります。腕の力や使う場所によっては、別のタイプのほうが合うこともあります。
この記事では、ピックアップ歩行器の基本から、他の歩行補助具との違い、正しい使い方、選び方、介護保険の使い方までまとめて解説します。ご本人はもちろん、ご家族の方もぜひ参考にしてください。
歩行器全体の種類やレンタルの流れは、こちらの記事で詳しく解説しています。
ピックアップ歩行器とは?
まずは、ピックアップ歩行器がどんな道具なのかを整理しましょう。呼び方の違いから解消していきますよ。
ピックアップ歩行器の特徴と役割
ピックアップ歩行器は、車輪の付いていないフレーム型の歩行器です。
四本の脚で床に立ち、両手でグリップを握って体重を預けながら使います。車輪がないぶん、床に置いた状態では本体が動きにくいつくりです。
たとえば、星光医療器製作所の「アルコー10型」は重量2.3kgほどで、高さを6段階に調整できます。室内で扱いやすいスリムな形が特徴です。
体重の一部を腕で支えることで、脚にかかる負担を分散できます。「杖では心もとない、でも介助なしで動きたい」という段階を支える道具です。
「ピックアップウォーカー」「固定型歩行器」との呼び方の違い
ピックアップ歩行器には、いくつかの呼び方があります。結論として、どれもほぼ同じ道具を指していると考えて差し支えありません。
呼び方が分かれるのは、着目している点が違うためです。「ピックアップウォーカー」は英語の呼び方、「固定型歩行器」は床に置くと動かない構造に着目した言い方です。
たとえば、同じ製品がメーカーのサイトでは「固定型歩行器」、レンタル事業者のページでは「ピックアップ型」と紹介されていることがあります。カタログでは「持ち上げ型」と書かれる場合もあります。
名称に惑わされず、車輪の有無と進み方で中身を見比べるのがコツです。
ピックアップ歩行器が向いている人
ピックアップ歩行器が向いているのは、しっかりした支えが必要で、本体を持ち上げる力がある方です。
次のような様子があれば、検討する価値があります。
杖では左右のふらつきが気になる
立ち上がった直後にバランスを崩しやすい
室内でも壁や家具を伝って歩いている
退院直後で、まずは短い距離から歩きたい
歩行器を持ち上げて前に置く動作ができる
車輪がないぶん、支える力は歩行器の中でも高いためです。
たとえば、ベッドからトイレまでの移動を自分で行いたい方に向いています。反対に、屋外を長く歩きたい方には、押して進む歩行車のほうが適しています。
ピックアップ歩行器と他の歩行補助具の違い

歩行補助具は種類が多く、見た目が似ているものもあります。よく比べられる4つとの違いを見ていきましょう。
交互型歩行器との違い
交互型歩行器は、左右のフレームを前後に動かせるタイプです。違いは、本体全体を持ち上げるかどうかにあります。
ピックアップ型は枠ごと持ち上げて前に置きます。交互型は右、左と交互に押し出して進むため、持ち上げる力が少なくて済みます。そのぶん床から脚が離れる瞬間があり、支えは控えめです。
たとえば、腕や肩の力が弱く、枠を持ち上げると姿勢が崩れてしまう方には交互型が候補になります。
支えの強さを取るか、持ち上げる負担を減らすか。ここが選び分けの分かれ目です。
キャスター付き歩行器との違い
キャスター付き歩行器は、ピックアップ型の前脚に車輪を付けたタイプです。持ち上げずに、前へ滑らせるように進めます。
前輪だけに車輪が付いた製品では、体重をかけると後脚が接地して止まりやすい構造になっています。持ち上げる動作がないため、歩くリズムを止めにくいのが利点です。
たとえば、ユーバ産業の「スライドフィットEX」のように、キャスターを付け外しして使い方を変えられる製品もあります。
一方で、本体が思ったより前に進んでしまうこともあります。持ち上げる動作が負担なら、まず比べたいタイプです。
歩行車・シルバーカーとの違い
歩行車は、四輪とブレーキを備え、押して進むタイプです。屋外を続けて歩く場面に向いています。
ピックアップ歩行器は室内の短い距離が中心で、支える力では歩行車を上回ります。一方のシルバーカーは、荷物を運び休憩するための手押し車で、体重を預ける構造ではありません。そのため介護保険の福祉用具貸与の対象外です。
たとえば、見た目が似ていても、体重をかけたときに本体が動くならシルバーカーの可能性があります。
見た目や付属品ではなく、体重を預けられるつくりかどうかで見分けましょう。
こちらの記事もぜひご覧ください。
杖・手すりとの使い分け
杖は片手で支える道具で、支えられる体重は歩行器より小さくなります。ピックアップ歩行器は両手で囲むように支えるため、左右のふらつきに対応しやすいのが違いです。
手すりは住宅に固定されるぶん、決まった動線では確実な支えになります。ただし手すりのない部屋では使えません。歩行器は移動先へ持っていける点が異なります。
たとえば、廊下は手すり、居室からトイレまでは歩行器、外出時は杖、といった使い分けをしている方もいます。
一つに絞らず、場所ごとに組み合わせて考えるのが現実的です。
ピックアップ歩行器のメリットと注意点
どんな道具にも、得意な場面と苦手な場面があります。良い面と気をつけたい面の両方を見ていきましょう。
支える力が強く、室内で扱いやすい
ピックアップ歩行器の一番のメリットは、支える力の強さです。
車輪がないため、床に置いた状態では本体が滑りにくくなっています。四本の脚とゴム製の脚先が、体重を受け止める前提でつくられているからです。
たとえば、立ち上がった直後にふらつきやすい方が、枠を支えにして姿勢を整えてから歩き出す、という使い方ができます。
歩行車のように本体が先に進む心配が少なく、自分のペースで一歩ずつ進めます。
一歩ごとに持ち上げる負担がある
一方で、注意したいのが持ち上げる動作です。ピックアップ歩行器は、一歩ごとに本体を持ち上げて前へ置く必要があります。
本体は2〜3kg程度の製品が多く、数字の上では軽く感じます。しかし、これを何十回も繰り返すとなると話は別です。持ち上げた瞬間は自分の脚だけで立つため、姿勢が崩れやすい点にも注意が必要です。
たとえば、外出のように距離が長い場面では、途中で腕が疲れてしまうことがあります。
短い距離で使う道具、と考えておくと選び方を誤りにくくなります。
使用が向きにくいケース
ピックアップ歩行器が向きにくい場合もあります。代表的なのは、持ち上げる動作が難しい方と、屋外を長く歩きたい方です。
この歩行器が「持ち上げて置く」ことを前提に設計されているからです。段差や坂道、砂利道では脚が安定して接地しにくく、屋外の連続歩行には通常向きません。
たとえば、歩行器を持ち上げるたびに体が左右に傾くようなら、交互型やキャスター付きへの変更を相談したい場面です。
使いにくさを感じたら我慢せず、理学療法士や福祉用具専門相談員に確認してもらいましょう。
ピックアップ歩行器の正しい使い方
支える力の強い歩行器でも、使い方が合っていないと歩きにくくなります。基本の手順を押さえておきましょう。
使い始めに高さを合わせる
手元に届いたら、最初に高さ調整を行いましょう。
グリップの位置が合わないと、前かがみになったり、逆に体が反ったりするからです。多くの製品は5〜6段階で調整でき、左右のピンが同じ穴に入っているかも確認が必要です。
たとえば、アルコー10型は62.5〜75cmの範囲を6段階で調整できます。室内履きを履いた状態で合わせると、実際の使用感に近づきます。
高さが合うだけで、歩きやすさは大きく変わります。
ハンドル高さの目安
高さの目安は、自然に立って腕を下ろしたとき、手首のあたりにグリップがくる位置とされています。
ひじが軽く曲がる位置に手が来ると、無理なく体重を預けやすいためです。ひじが伸びきる高さは低すぎ、肩が上がる高さは高すぎるサインです。
たとえば、握ったときにひじが20〜30度ほど曲がるかを確認します。前かがみが強くなる場合は、一段上げて試してみてください。
数値はあくまで目安です。最終的には、ご本人の感覚と専門職の確認で決めましょう。
「持ち上げる→置く→歩く」の基本手順

使い方の基本は、持ち上げる、置く、歩くの三拍子です。この順番が、安定して歩くための前提になります。
まず両手でグリップを握り、歩行器を軽く持ち上げます。次に体の前方へ静かに置き、四本の脚がすべて床に着いたことを確認します。そのうえで、歩行器に体重を預けながら足を進めます。
たとえば、脚を先に出してから歩行器を引き寄せる使い方は、支えのない状態で足を運ぶことになります。
置く位置は、つま先から一歩ぶんほど前が目安です。遠すぎると前かがみになり、近すぎると脚がフレームに当たります。
立ち上がり・方向転換のポイント
立ち上がるときは、歩行器を支えにしないことが基本です。車輪がなくても、体重のかけ方によっては本体が傾くことがあります。
まずは椅子やベッドの座面に手をついて立ち上がり、姿勢が安定してからグリップを握ります。方向転換では、一度に大きく回らず、歩行器を少しずつ置き直しながら向きを変えます。
たとえば、トイレの中のように狭い場所では、小刻みに向きを変えたほうが安全です。
急がず、一動作ずつ区切ることが大切です。
使用を避けたい場所と環境整備
ピックアップ歩行器は、平らな床で使うことを前提にした道具です。段差や坂道、濡れた床では脚が安定して接地しにくくなります。
階段での使用は想定されていません。玄関の上がりかまちのような段差も、そのまま越えるのは避けたい場面です。床のマットやコード類も、脚が引っかかる原因になります。
たとえば、居室からトイレまでの動線にあるマットを外しておくだけでも、歩きやすさが変わります。
道具を選ぶ前に、通る道を見直しておきましょう。
ピックアップ歩行器の選び方【4つのポイント】

ここからは、選ぶときの具体的なチェックポイントを4つ紹介します。順番に確認すれば、「身体に合わない」という失敗を防げますよ。
腕の力とバランスで選ぶ
まず確認したいのは、腕の力とバランスです。歩行器を持ち上げられるかどうかが、ピックアップ型を選べるかの分かれ目になります。
この歩行器が、持ち上げる前提でつくられているからです。持ち上げると姿勢が崩れる、途中で腕が疲れるという場合は、交互型やキャスター付きのほうが合うことがあります。
たとえば、握力が弱くグリップを握り続けにくい方は、前腕を載せて支えるタイプも候補になります。
必要な支えの程度は自己判断が難しい部分です。専門職に歩き方を見てもらいましょう。
使用場所で選ぶ
次に、どこで使うかを決めます。ピックアップ歩行器は、基本的に室内向けの道具です。
屋内で使う場合は、廊下やドアの幅、曲がり角、敷居を確認します。屋外でも短い距離なら使えることがありますが、段差や坂道の多い環境では別のタイプが向きます。
たとえば、室内はピックアップ型、買い物は歩行車、と使い分けている方もいます。
一台ですべてをまかなおうとすると、かえって使いにくくなる場合があります。使う場面を書き出すことから始めましょう。
サイズ・重量・折りたたみで選ぶ
サイズは、支えやすさと通りやすさの両方に関わります。幅が広いほど囲まれる感覚は強くなりますが、通れない場所も増えます。
重量は2〜3kg台が中心です。軽いほど持ち上げやすい一方、軽すぎると支えたときに心もとなく感じる方もいます。折りたたみに対応した製品なら、使わないときに家具の隙間へ収納できます。
たとえば、幅46cmの歩行器でも、開口部が50cmしかないドアでは斜めにしないと通れません。購入やレンタルの前に、廊下の有効幅とドアの開口部を測っておきましょう。
目安として、本体幅に片側3cmほどの余裕があると通りやすくなります。
高さ調整段階とグリップ形状で選ぶ
高さ調整の段階は、製品によって異なります。段階が細かいほど、体に合う位置を見つけやすくなります。
小柄な方や背の高い方は、調整範囲の上限と下限も確認しておきたいところです。標準タイプで合わない場合は、ハイタイプやミニタイプを用意しているシリーズもあります。
たとえば、手指に痛みがある方は、太めで柔らかい素材のグリップのほうが握りやすいことがあります。
長く使う道具だからこそ、手に触れる部分は実物で確かめましょう。
結局どれを選べばいい?身体状況・使用場所別のおすすめ
ここまでの内容を、「結局どれを選べばいいか」に落とし込みます。ご本人の身体状況と、よく使う場所の掛け合わせで決めましょう。
軽度(室内は歩けるが不安がある)の方
室内中心・立ち上がりに不安がある → 立ち上がり補助機能付きのピックアップ歩行器
室内中心・住宅が狭い → ミニタイプ、スリムタイプのピックアップ歩行器
屋外も歩きたい → 四輪の歩行車、またはキャスター付き歩行器
この段階では、支えよりも取り回しのよさが使い続けやすさにつながります。
たとえば、「家の中は歩けるが、立ち上がりだけ不安」という方なら、二段ハンドルのタイプが役立ちます。
中等度(ふらつきがあり支えが必要)の方
室内中心・持ち上げる力がある → 標準タイプのピックアップ歩行器
室内中心・持ち上げる力が弱い → 交互型歩行器、または前輪キャスター付き
腕が疲れやすい・距離を歩きたい → キャスター付き歩行器、四輪歩行車
支える力を優先しつつ、持ち上げられるかで分岐します。
たとえば、「壁を伝って歩くことが増えた」という段階なら、両手で囲むピックアップ型の安定感が生きます。
重度(退院直後・腕の力が弱い)の方
急性期・退院直後で立位が不安定 → 前腕支持型や馬蹄型の歩行車(病院で使われることが多いタイプ)
握力が弱く、グリップを握り続けにくい → 前腕支持型
持ち上げる動作が難しい → 交互型歩行器
握力に頼らず、腕全体で支えられるタイプを選びます。
たとえば、手術後や退院直後は、身体の状態が短い期間で変わります。まずはレンタルで試し、専門職に確認してもらいましょう。
判断に迷うときは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してください。福祉用具専門相談員とは、身体に合った道具選びを助言してくれる専門の相談員のことです。
タイプ別おすすめのピックアップ歩行器
ここでは、代表的なピックアップ歩行器をタイプ別に紹介します。最新の仕様や価格は、各メーカーの公式情報でご確認ください。
標準・ミニ・ハイタイプ
体格に合わせてサイズを選びたい場合は、複数展開のあるシリーズが候補になります。同じシリーズなら、支え方を変えずにサイズだけ調整できるためです。
星光医療器製作所 アルコー10型/約2.3kg・高さ6段階
イーストアイ セーフティーアームウォーカー ミニ/小柄な方向け
ミニタイプは幅と高さを抑えた設計で、狭い住宅にも向いています。ハイタイプは調整範囲の上限が高く、背の高い方が前かがみになりにくいつくりです。
立ち上がり補助・座面付きタイプ
立ち上がりや休憩に不安がある場合は、機能の付いたタイプが候補です。歩くことより、立ち座りのほうが負担になる方が多いためです。
星光医療器製作所 アルコー2段ハンドル固定歩行器/二段ハンドル
イーアス Rec01(レックゼロワン)/座面付き固定型
ユーバ産業 スライドフィットEX/キャスター切り替えに対応
座面を使うときは、本体が動かないことを確認してから腰かけてください。
超軽量タイプ
持ち上げる負担を抑えたい場合は、素材で選ぶ方法があります。一歩ごとに持ち上げるピックアップ型では、わずかな重さの差が積み重なるからです。
田辺プレス MgウォーカーIII/マグネシウム合金製
シンエンス カーボンウォーカーII/カーボン製
シンエンス スリムフレームウォーカー/スリム設計・折りたたみ式
ただし、軽い歩行器がすべての方に合うとは限りません。支えたときの安心感もあわせて確かめてください。
ピックアップ歩行器と介護保険|レンタルと購入の選び方
「借りられるの?」「買ったほうがいいの?」という疑問にお答えします。ピックアップ歩行器は、制度の面で歩行車と扱いが異なります。
ピックアップ歩行器は介護保険レンタルの対象
ピックアップ歩行器は、介護保険の「福祉用具貸与」の対象です。
介護保険の種目「歩行器」に、車輪なしの歩行器と車輪付きの歩行車の両方が含まれるからです。要支援1の方から原則レンタルでき、自己負担は所得に応じて1〜3割です。
たとえば、1割負担の方なら、月数百円程度で借りられる製品もあります。
なお、シルバーカーは身体を支える構造という要件を満たさないため、原則として対象外です。
2024年度からは「貸与・販売選択制」の対象
ピックアップ歩行器は、レンタルと購入を選べる品目です。
2024年度に始まった貸与・販売の選択制が、「歩行器(歩行車を除く)」を対象としているためです。車輪のないピックアップ型は、この対象に含まれます。
たとえば、長く使う見込みがある場合に、購入という選択肢を相談できるようになりました。車輪付きの歩行車は対象外で、レンタルが前提となります。
制度の内容は改定で変わることがあります。利用前に、ケアマネジャーへ最新の扱いを確認してください。
レンタルの相談先と申し込みの流れ
介護保険で利用するなら、まずは担当のケアマネジャーに相談しましょう。
ケアプランに沿って福祉用具が提案され、そのうえで製品を選ぶ流れになるからです。要支援の方や認定を受けていない方は、地域包括支援センターが窓口になります。
たとえば、福祉用具専門相談員が自宅を訪ね、廊下の幅や段差を見たうえで高さを調整してくれます。合わない場合に機種を変更できることも、レンタルの利点です。
費用や申請手順は、別の記事で詳しく解説しています。
購入する場合の価格の目安
購入する場合、ピックアップ歩行器の価格は1万円台から3万円台が目安です。
カーボンやマグネシウムを使った軽量モデルでは、さらに高くなることがあります。また、一定の要件を満たす福祉用具は消費税が非課税として扱われ、販売ページに「非課税」と表示されます。
たとえば、同じシリーズでも付属品は課税対象になることがあります。見積もりの段階で総額を確認しておくと安心です。
価格だけでなく、調整や交換の相談ができるかまで含めて比べましょう。
ピックアップ歩行器を安全に使うための注意点
歩行器は体重を預けて使う道具です。日々の点検が、安心して使い続けるための土台になります。
脚ゴム・グリップ・ネジの点検
まず確認したいのは、床に接する脚ゴムです。すり減ったり硬くなったりすると、床で滑りやすくなります。
体重を受け止める部分から、少しずつ消耗していくからです。グリップの緩み、高さ調整のピンやネジの固定も、あわせて確認します。
たとえば、脚ゴムの溝が消えて表面が平らになっていたら、交換の目安と考えられます。
月に一度、明るい場所で全体を見る習慣をつけましょう。
折りたたみロックとキャスターの確認
折りたたみ式の製品では、開いたときにロックがかかっているかが重要です。
ロックが甘いまま体重をかけると、フレームが動いてしまうおそれがあるからです。キャスター付きモデルでは、髪の毛や糸が車輪に巻き付いていないかも確認します。
たとえば、体重をかけたときに片側だけ沈む感じがあれば、フレームの緩みが疑われます。
異音やがたつきに気づいたら、そのまま使わず購入店や貸与事業者へ相談してください。
見直し・買い替えのタイミング
歩行器は、身体の状態が変われば合わなくなることがあります。
持ち上げるのがつらくなってきた、前かがみの姿勢が強くなった、つまずくことが増えた。こうした変化は、見直しのサインです。
たとえば、反対に歩行が安定して屋外を歩きたくなった場合も、切り替えを考えるタイミングになります。レンタルであれば、機種変更を相談できます。
「使いにくいけれど、借りたものだから」と我慢せず、専門職へ伝えることが大切です。
「持ち上げて歩く」以外の選択肢を探している方へ
ここまで、体重を預けて歩くための道具を紹介してきました。最後に、その先にある選択肢についてもお話しします。
一歩ごとの持ち上げと、両手がふさがること
ピックアップ歩行器は支える力が強い一方で、一歩ごとに本体を持ち上げる必要があります。
腕の力を使い続けるため、距離が伸びるほど負担が積み重なるからです。また、両手がふさがるため、荷物を持ったり手すりを使ったりしにくい場面もあります。
たとえば、「散歩は続けたいけれど、歩行器を持ち上げながら歩くのはつらい」というご相談は少なくありません。それは、道具の性能ではなく、使い心地や気持ちの問題であることもあります。
そんなときに知っておきたいのが、歩行そのものをサポートする機器です。
装着型の歩行支援ロボット「WIM S」という選択肢
ここまで紹介したピックアップ歩行器は、身体を預けながら使う道具です。一方で、身体に装着し、脚の動きそのものをアシストする歩行支援機器もあります。
「歩行器を持ち上げて歩くのは大変だなぁ」という方もいらっしゃると思います。そのときの選択肢にぜひ加えていただけたらと思います。
当社の装着型歩行支援ロボット「WIM S」は、腰に装着して歩行動作をアシストする製品です。ピックアップ歩行器のように前方へ身体を預ける必要がないため、前かがみになりにくく、両手を自由に使いながら歩けるのが大きな特徴です。本体を持ち上げて置く動作も必要ないため、歩くリズムが途切れにくくなります。
さらに、脚の振り出しをサポートすることで、自然に歩幅を広げやすく、良い歩行姿勢を意識しながら歩くトレーニングにも活用できます。
約1.6kgと軽く、散歩や外出など日常生活の中で使いやすいことも装着型ならではのメリットです。一方で、立ち止まったときに体重を預けて支える役割は、歩行器にしかない強みです。
WIM Sをピックアップ歩行器の代わりとして全面的におすすめすることはできません。ご本人の目的や身体の状態に合うかを確認し、必要に応じて専門職へ相談しながら検討してください。
歩行支援ロボットの種類や選び方は、別の記事で詳しく解説しています。
ピックアップ歩行器に関するよくある質問
最後に、ピックアップ歩行器についてよく寄せられる質問にお答えします。
Q1:ピックアップ歩行器は屋外でも使えますか?
A:平らな道であれば短い距離で使われることもありますが、基本は室内向けの道具です。一歩ごとに持ち上げる必要があるため、段差や坂道、砂利道では脚が安定して接地しにくくなります。たとえば、屋外である程度の距離を歩きたい場合は、四輪とブレーキを備えた歩行車が候補になります。使用場所については、福祉用具専門相談員に相談してみてください。
Q1:一人で使っても問題ありませんか?
A:一人で使えるかどうかは、歩き方や立ち上がりの安定性によって変わります。持ち上げたときに体が傾く、方向転換でふらつくといった様子があれば、まずは見守りのある環境で練習することが大切です。たとえば、使い始めの時期は、理学療法士に動作を確認してもらうと安心です。慣れてきたあとも、疲れているときは無理をしないようにしましょう。
Q1:レンタルと購入はどちらが向いていますか?
A:使う期間の見込みで考えるのが基本です。退院直後など一時的な利用ならレンタル、長く使う見込みがあるなら購入が候補になります。2024年度に始まった貸与・販売の選択制では、ピックアップ歩行器は購入も選べる品目です。たとえば、身体の状態が変わりやすい時期は、機種を変更できるレンタルが向いています。判断に迷う場合は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員にご確認ください。
Q1:介護認定がなくても使えますか?
A:使えます。自費で購入したり、レンタルしたりすることも可能です。ただし、その場合は費用が全額自己負担になります。認定を受けていない場合は、地域包括支援センターが相談窓口になります。たとえば、自治体によっては独自の助成制度がある場合もあります。認定の有無にかかわらず、購入前に実際に試し、専門職に確認してもらいましょう。
Q1:軽い歩行器ほど使いやすいですか?
A:必ずしもそうとは限りません。持ち上げる負担は軽くなりますが、体重を預けたときに軽さが心もとなく感じる方もいます。実際には、重量だけでなく幅、高さ、グリップの形、脚ゴムの状態が使いやすさに影響します。たとえば、同じ2kg台でも、幅の広い製品のほうが安定して感じられることがあります。可能な限り、ご本人が実際に試してから決めましょう。
Q1:歩行器とシルバーカーは何が違いますか?
A:一番の違いは、体重を預けて身体を支えられるかどうかです。歩行器は身体を支える前提でつくられた福祉用具ですが、シルバーカーは荷物を運び、休憩するための手押し車です。シルバーカーは体重を支える構造ではないため、介護保険の福祉用具貸与の対象外です。たとえば、見た目が似ていても、寄りかかると動いてしまう製品はシルバーカーの可能性があります。見た目や付属品ではなく、支える構造があるかで判断しましょう。
まとめ|ピックアップ歩行器は「支える力」を優先したい方の選択肢
最後に、この記事の要点を3つに整理します。
ピックアップ歩行器は、車輪のないフレームを持ち上げて進む歩行器。支える力が強く、室内で一歩ずつ歩きたい方に向く
選び方は、腕の力と使用場所の掛け合わせ。持ち上げる力があれば標準タイプ、力が弱ければ交互型やキャスター付き、退院直後で立位が不安定なら前腕支持型・馬蹄型が目安
介護保険では福祉用具貸与の対象で、要支援1からレンタル可能。2024年度からの貸与・販売選択制の対象でもあり、購入も選べる
ピックアップ歩行器は、「自分の脚で歩く時間」を支えるための道具です。いつもの生活動線を思い浮かべながら、身体に合う1台を選んでください。
ご家族の方は、ぜひご本人と一緒に、実際に持ち上げて歩くところから試してみましょう。
歩行器の基本や種類全体を確認したい方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。






コメント