高齢者の歩幅の平均は?年代別の参考値と測り方
歩幅の参考値として、国立長寿医療研究センターの調査では、70〜79歳の通常歩行の平均が男性69.0cm、女性64.0cmでした。ただし、これは特定の調査参加者を測った値で、全員が目指す数字ではありません。
この記事では、年代別の平均を確認したうえで、自分の歩幅の測り方、数字を比べるときのポイント、以前より狭くなったときの考え方を紹介します。平均との違いだけでなく、自分の歩き方や生活にどんな変化があるかを見ていきましょう。
急にふらついて立っていられない、突然片側の手足に力が入らない、ろれつが回らない場合は、歩幅を測らず119番へ連絡してください。
高齢者の歩幅の平均を年代・男女別に確認する
ここでいう歩幅は、片足を着いた位置から、次に反対の足を着く位置までの「一歩の長さ」です。
次の表は、国立長寿医療研究センターのNILS-LSA第8次調査で公表された、普段の速さで歩いたときの値です。調査は2013年10月から2016年2月に行われました。
年代 | 性別 | 平均歩幅 | 標準偏差(SD) | 測定人数 |
|---|---|---|---|---|
60〜69歳 | 男性 | 73.1cm | 7.5cm | 294人 |
60〜69歳 | 女性 | 67.4cm | 7.0cm | 264人 |
70〜79歳 | 男性 | 69.0cm | 8.5cm | 240人 |
70〜79歳 | 女性 | 64.0cm | 7.7cm | 234人 |
80歳以上 | 男性 | 61.2cm | 9.5cm | 114人 |
80歳以上 | 女性 | 57.1cm | 9.0cm | 109人 |
SD(標準偏差)は、調査に参加した人たちの歩幅が、平均のまわりにどれくらい広がっているかを表す数値です。SDが小さいほど値が平均の近くに集まり、大きいほど人による違いが大きい、と読みます。
たとえば、70〜79歳の男性は平均69.0cm、SD8.5cmです。これは「みんなが69.0cmで歩いていた」という意味ではありません。平均からSD一つ分を引くと60.5cm、足すと77.5cmになります。この計算はばらつきの大きさをイメージするためのもので、参加者全員がこの範囲に収まることや、この範囲なら正常であることを示すものではありません。
なお、表の60〜69歳には、65歳未満の人も含まれます。
この研究は、もともと愛知県大府市・東浦町の住民から選ばれた人たちを対象としており、第8次は以前の参加者を追跡した調査です。現在の日本全国の高齢者を一度に調べた平均ではありません。
平均は全員が目指す歩幅でも正常・異常の境目でもない
同じ年代でも、身長や体の状態、歩き方は異なります。平均より短いことだけで病気とは判断できず、平均以上だから問題がないともいえません。表のSDも、健康な範囲と病気の範囲を分ける線ではありません。
たとえば、以前から小柄で歩幅が短めの人と、最近急に足が出にくくなった人では、同じ数値でも捉え方が違います。参考値は自分を採点するためではなく、いつもの歩き方を知る手がかりとして使うと役立ちます。
自分の歩幅を測るには?10歩で確かめる方法

家庭で歩幅を知る方法の一つが、「普段どおりに10歩歩き、その距離を10で割る」簡易測定です。一歩だけを測るより、何歩かの平均として捉えられます。医療機関で行う検査や、研究用の機器による測定と同じものではありません。
平らな場所で普段どおりに歩ける条件を整える
10歩進んだあとも余裕を持って止まれる、平らで滑りにくい直線の場所を選びます。障害物を片づけ、普段履いている歩きやすい靴で行います。いつも杖などを使う人は、測定のために外す必要はありません。
家族などに歩数を数え、距離を測ってもらうと、自分は歩くことに集中できます。歩きながら床の目盛りをのぞき込んだり、結果をよくするために大股にしたりせず、いつもの歩き方で進みます。痛みやふらつきがある日、体調が悪い日は測定を見送ってください。
10歩で進んだ距離を10で割り条件と一緒に記録する
測る位置をそろえると、記録を比べやすくなります。つま先を目印にする場合は、次のように進めます。
両足のつま先をスタートの線にそろえます。
最初に出した足を1歩目として、普段どおりに10歩進みます。
10歩目に着いた足のつま先の位置に印をつけます。体を安定させてから距離を測ります。
スタートの線から印までの距離を10で割ります。
計算式は、歩幅(cm)=10歩で進んだ距離(m)×100÷10です。
たとえば10歩で6m進んだ場合は、6×100÷10=60cm。この60cmは、その10歩での平均です。左右それぞれの一歩が常に60cmという意味ではありません。
数値と一緒に、次のような条件も短く残しておくと便利です。
日付と測った場所
10歩の距離と計算した歩幅
履いていた靴、杖などの使用の有無
その日の体調や、歩いていて気になったこと
次に測るときも同じ場所・靴・普段のペースにそろえると、その日の条件による違いを減らせます。
平均と比べる前に数値の条件を確認する

歩幅を調べると、年代別の表、身長から求める計算式、アプリに表示される数字などが見つかります。しかし、同じ「歩幅」という名前でも、数値の作り方が同じとは限りません。比べる前に、次の3点を押さえておきましょう。
身長から計算した目安と実測の平均は別もの
「身長×0.37〜0.45」は、歩数計メーカーが案内している歩幅の目安の一つです。一方、冒頭の表は、調査参加者が実際に歩いた結果を平均したものです。計算による目安と、ある集団の実測平均は分けて考えます。
「身長−100cm」を基準に、歩幅と身体機能の関係を調べた研究もあります。ただし、2024年公表の研究は、体力測定会に自ら参加できた65歳以上の女性133人を分析したものです。その式だけで、年齢・性別・体の状態を問わず、病気の有無や適切な歩幅が決まるわけではありません。
自分の普段の一歩を知る目的なら、安全に測れる範囲で実測し、身長からの計算値は補助的な目安として読むのがよいでしょう。
一歩の歩幅と二歩分のストライドを読み分ける

歩行を表す主な言葉は、次のように区別されます。
用語 | 表しているもの |
|---|---|
歩幅・ステップ長 | 片足の接地から、反対の足の接地までの一歩の長さ |
ストライド長・重複歩距離 | 片足の接地から、同じ足が再び接地するまでの二歩分の長さ |
歩隔 | 左右の足の間にある、横方向の幅 |
たとえば一歩が左右とも60cmなら、二歩分のストライドは120cmです。60cmと120cmという数字が並んでいても、単に測っているものが違う可能性があります。
アプリや機器では独自の用語を使う場合もあります。「ストライド」と表示されていても名前だけで二歩分と決めず、説明書の定義を見ると、入力や比較の間違いを防げます。
年齢区分や歩く速さなど比較条件をそろえる
同じ一歩の長さでも、普段のペースと、できるだけ速く歩いたときとでは条件が異なります。また、靴や補助具の使用、測定区間、歩き始めから測るか、助走を設けるかによっても、単純には比べられません。
年代別の値を見るときは、年齢区分・性別・調査時期と対象者、通常歩行かどうかを確認します。冒頭のNILS-LSAの表には、測定機器と通常歩行であることは記載されていますが、その表だけでは靴や助走などの詳しい条件までは分かりません。
家庭の10歩法の結果を研究値と厳密にそろえるより、まずは自分の記録を同じ条件で比べることが、日常の変化を捉えるうえでは取り組みやすい方法です。
以前より歩幅が狭くなったときの考え方
「平均より何cm短いか」に加えて、「いつから、どんな場面で歩きにくくなったか」に目を向けると、次にすることを考えやすくなります。歩幅の変化には、体の状態と歩く環境の両方が関わります。
筋力や関節の動き 痛みなども歩幅に関わる
足を前へ運ぶには、筋力だけでなく、関節の動きやバランスも必要です。痛みをかばう、転ぶのが怖くて慎重になる、といったことでも歩き方は変わります。
歩幅と下肢の筋力・バランス機能との関連を示す研究はありますが、短い歩幅だけから原因を一つに絞ることはできません。「年齢のせい」「筋力不足」と決める前に、左右で足の出し方が違わないか、痛みがないか、外出で困る場面が増えていないかを振り返ってみてください。
無理に大股にするより安全に続けられる歩き方を考える
平均値に合わせようとして、一歩を大きくすることが最優先ではありません。本人が安定して歩けること、買い物や外出を続けられることを出発点にします。
たとえば、「買い物の帰りに疲れる」なら距離や休憩場所を、「段差で足を出しにくい」ならその場面を具体的に整理します。運動を取り入れる場合も、歩幅を広げる練習だけで解決しようとせず、体の状態に合った筋力やバランスの運動を選ぶ考え方が大切です。
家族が声をかけるときも、「もっと大股で」より「どこが歩きにくい?」と尋ねるほうが、本人の困りごとを共有しやすくなります。
痛みやふらつきがあるときは測定より相談を優先する

痛みが続く、ふらつく、つまずくことが増えたなどの変化があるときは、測定結果をそろえることより、かかりつけ医などへ相談することを優先します。必要に応じて、理学療法士などのリハビリ専門職につないでもらえます。
相談の際は、「いつ頃から」「急にか、少しずつか」「左右差や痛みはあるか」「生活のどの場面で困るか」を伝えると、状況を説明しやすくなります。歩幅を安全に測れていなくても、受診のために測り直す必要はありません。冒頭に挙げた急な強い症状は、通常の受診予約を待たず救急対応が必要です。
歩幅を測った先に、続けたい外出を考える
歩幅の記録は、数字の変化を知るだけでなく、日常の歩き方を考える材料にもなります。「近所への買い物を続けたい」「いつもの散歩道を歩きたい」など、続けたい外出とあわせて振り返ってみましょう。
そのための工夫は、大股で歩くことに限りません。歩く距離や休憩の取り方を見直し、体を支える道具が必要な場合には、杖や歩行器なども選択肢になります。歩幅の短さだけで必要性を決めるのではなく、歩くときにどの程度の支えが必要か、どこで使うかに合わせて考えます。
杖・歩行器を使い始める目安や選び方は、次の関連記事で紹介しています。

一方、歩行動作の補助を考える場合には、腰に装着するWIM Sという選択肢もあります。体を支える杖・歩行器とは役割が異なり、代わりに使うものではありません。自立歩行が可能な方を前提とする製品で、病気を治療する医療機器ではありません。
体験する場合は、普段の靴や補助具、歩きたい場所を伝えたうえで、次のような点を確かめます。
装着したときに、締め付けや動きにくさがないか
操作を理解し、必要なときに止めたり調整したりできるか
普段の歩行と比べて、どのような違いを感じるか
普段の補助具は自己判断で外さず、体験時に使用状況を伝えます。体験に関心がある方は、WIM Sの製品情報で使い方や体験の条件をご覧ください。
高齢者の歩幅についてよくある質問
Q1:2ステップテストの歩幅と普段の歩幅は同じですか
A:別のものです。2ステップテストは、できる限り大きく二歩進んだ距離を身長で割って評価します。普段のペースでの一歩の平均とは比較できません。実施には介助者や滑りにくい床などの条件があるため、方法は日本整形外科学会の公式案内で確認してください。
Q2:歩数計やアプリには平均の歩幅を設定してよいですか
A:手動で歩幅を設定する機器では、自分の実測値を使えるか説明書で確認するとよいでしょう。年代の平均は自分の歩幅とは限らず、距離の計算に差が出ることがあります。機器側が一歩と二歩のどちらを求めているかも、入力前に確かめます。
Q3:平均より歩幅が短いと病気だと判断できますか
A:平均との大小だけでは判断できません。体格や測定条件も関わります。以前より急に変わった、痛みや歩きにくさがあるなど、数値以外の変化もあわせて相談することが大切です。
Q4:杖を使っている場合も同じ平均と比べてよいですか
A:杖の使用や調査対象の条件が違う場合、同じ基準で評価することはできません。平均と比べるために杖を外すのではなく、普段の補助具を使った状態として記録します。安全に測れない場合は無理をせず、医療機関で相談してください。
まとめ 平均よりも条件をそろえた自分の変化を確かめる
高齢者の歩幅の平均は、自分の歩き方を知る参考になります。ただし、年代の表も身長からの計算式も、一人ひとりの合格ラインではありません。
安全に歩ける状態なら、まずは普段どおりの10歩を測り、靴や体調と一緒に記録してみましょう。次に比べるときは条件をそろえ、数字だけでなく、歩きやすさや外出時の困りごとも残す。それが、自分に合った歩き方や必要な支援を考える材料になります。






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